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第53話
「騎士学校に首突っ込むと、生きてはいられなくなる」
しおりを挟むランだけじゃなく、ノウゼンカズラ達も光線を少し体に受けてしまった為か体はボロボロだった。
そして、一人の生徒が声を上げる。
「痛・・・痛いっ」
その女子生徒の肩には光線が突き刺さっていた。
「お、おい大丈夫か!?」
「あ、当たったの!?」
ジュリエッタが生み出した魔法だったからか、ジュリエッタ自身が魔法を解除すればその光の光線も自然消滅するわけで。
女子生徒の肩に刺さっていた光の光線もやがて消えていった。
その女の子の肩からは大量の出血で、女の子はクラクラとしてその場に腰を落とす。
ケイリィ「待ってて・・っい、今先輩に・・・。!」
と、思ってランをみれば・・・ランもリチアを庇って光線に当たったのか胸からは大量の血を流していた。
リチア「せ 先輩・・・?なんで・・・私なんかのために・・・体、張って・・・」
ラン「・・・貴方だって、生徒を守るために体を張ろうとしていましたよね?・・・それと同じですよ・・・。
貴方は僕にとっての大切で、大事な生徒です」
リチア「どう、して・・・・・・」
リチアの瞳からは涙が溢れてくる。
ランは自分の胸に手を当てると治療をする。
一瞬にして血糊も消えて完全に怪我はなくなった。
ランは膝をついて、リチアの頬へ触れる。
ラン「・・・泣かないでください。僕はそう簡単に、死にませんから・・・」
ランはそこでふと周りを見渡す。
血を流して倒れている警備員達がいっぱい居て、ランは心の中で謝った。
守りきれずにごめんなさい・・・と。
ラン「生徒の皆さんは無事ですか?」
「1人刺されたんです!」
ランは立ち上がってリチアの頭にポンと手を置いた後生徒の方へと歩いていく。
・・・っ、いくら先輩が治療できるからといって・・・
私なんかを守って・・・先輩が傷つくところ見るのは、辛いのに・・・。
その場所に市民たちが集まりだしてきて、そこに居合わせた警官達はここから先は立ち入り禁止ですと市民へと呼びかけていた。
「こ、これは・・・」
「騎士団、やられたの・・・?あの子供1人に?」
「騎士団は我々市民のヒーロー的存在だぞ、そんな簡単にやられるわけないだろう、たかがあんな子供に」
「あの子供は尋常じゃない力を持ってるらしいわ。早く殺して欲しいところね。うちの子供もここんとこずっと怯えてるのよ。外歩く時も私にひっついたままだもん。」
その子供は親の後ろに隠れて様子を伺っていた。
ジュリエッタ「・・・」
カトレア「あらあら。わらわの可愛い子達ですらこんな子供一人に手こずるなんてね」
ジュリエッタ「!」
突然のその声にジュリエッタは顔だけをそちらに向けるとそこにはカトレアとキキョウが居た。
明らかにここにカトレアが来たことにより空気が一変して変わったのをジュリエッタは感じ取った。
このヒトは危険、だと・・・。
カトレアが倒れているジュリエッタの元へ来るとガシっとジュリエッタの首を掴み上げる。
ノウゼンカズラ「か、カトレア、様・・・」
カトレア「殺せないなら、神を引きずり出してでも殺さないとね?」
「・・・!!」
その時、親にしがみついていた子供はカトレアを見た瞬間一歩後ずさった。
ジュリエッタはカトレアに首を掴まれて苦しそうにしつつもカトレアを睨む。
するとジュリエッタの側に手鏡が現れ、そしてその手鏡のガラスが光ってそのガラスから光の針がカトレアの顔目掛けて放たれる。
カトレアはその光の針を避けるとジュリエッタを投げ捨てる。
ジュリエッタ「う・・うぅ・・・っ」
カトレア「ふぅん。変わった神様ね。鏡の神様なら、粉々に砕いちゃったらいいのかしら?」
ジュリエッタ「や・・・だ、め・・・っ」
カトレアはその手鏡を手にする。
そんなジュリエッタは手鏡へと手を伸ばしている。
それを見てカトレアは口元を釣り上げて笑っていれば、その場に一人の男の子が乱入してきた。
「あ、ちょっとキミ!?」
警官の呼び声にも振り返ることはなく、手にはナイフを持って一目散にカトレアの元へ駆け出す。
「リアン!?」
リアンと呼んだその子供の母親も追いかけようとしたが警官によって止められる。
「中に入って行ったら巻き込まれますよ!」
「けどっ、リアンが・・・っ」
リアンと呼ばれた男の子はカトレアの背にナイフを突き立てようとした。
カトレアには後ろを振り返らずとも分かっていたのか、背中に手鏡を回せば見事にその手鏡のガラスへとナイフが突き刺さったことにより割れたかと思ったが・・・。
ふと、リアンは鏡の中に映る自分の顔を見る。
ナイフが丁度鏡の中にいる自分の喉元に突き立てられている。
次の瞬間だった。
リアンは喉から血を吹き出して倒れる。
カトレア「あら?」
カトレアは振り返り、死んでいるリアンを見下ろす。
よく見たら、ガラの悪い男3人組にカモられていたあの時の坊やじゃない。・・・悪い子ね、ほんと。
ふとカトレアは手に持っていた手鏡を見れば割れたと思っていたガラスには傷一つ入っていなかった。
「い・・・いやあぁぁぁぁあ!!」
血を流して死んでいるリアンを見て生徒達から悲鳴が上げる。
カトレアは手鏡からパッと手を離すと、手鏡は姿を消した。
カトレア「ふむ・・・。
やはりそう簡単に殺せそうにはないかしら。キキョウ、その子を動かなくなるまでいたぶってやって」
キキョウ「はい」
キキョウは手に剣を出してに地面に剣を突き立てれば、ジュリエッタの居る場所から炎が湧き出てジュリエッタは燃やし尽くされる。
ジュリエッタ「ああああああぁぁぁあ!!!!」
ま、ま・・・ぱ、ぱ・・・・
ジュリエッタは空に手を伸ばす。
体が焼かれていく感覚・・・。
熱い・・・。
激しく燃やされたジュリエッタは炎の中で苦しんでいたが、やがて動かなくなったところを見て炎魔法を解いてやったキキョウ。
「リアン・・・リアン・・・!?」
リアンの母親を押さえ込んでいた警官だったが、母親はそれを押し退けてリアンの元へと駆け出す。
「か、カトレア様・・・っうちの子・・・リアンが・・・っ」
カトレア「お母様かしら?悪いけれど、
その子はもう死んでいるわ。神の怒りに触れたものだから」
「そんな・・・っ、神って・・・リアンが、何をしたの・・・・。この子は騎士学校の名前を聞くだけで怯えている毎日で・・・・。それは、なんでなの・・・?」
カトレア「・・・さぁ?
それ以上の詮索はやめたほうが良いわよ。・・・騎士学校に首突っ込むと、生きてはいられなくなる。
その子供と同じようになるかもね?」
母にしか聞こえない小さな声で言うカトレアに、母は怯えた瞳でカトレアを見上げている。
カトレア「さてと、ここの処理はランに任せようと思ったけれど皆相当お疲れのようね。こちらの魔法を使う子供はわらわ達の方で引き取るわ。
警官さん。ここの処理はお願いできるかしら?」
「は、はい!」
カトレア「それじゃ騎士団の皆さんは学校へ帰りましょうか」
リチア「・・・っ」
リチアだけはただ死んでしまったリアンとその側で泣いている母を見て、胸を押さえていた。
ケイ「リチア・・・いこう・・・・」
その場にへたりこんでいたリチアはケイリィの手を借りて立ち上がり、ケイリィとともにその場を歩き出す。
やはり気になってかリチアが後ろを振り返るとリアンを亡くした母親は凄い顔で睨んでいた。
リチア「!」
リチアはそれを見ないふりして・・・
ただ、ごめんなさい、ごめんなさいと何度も謝っていた...。
市民に紛れて後ろの方で一部始終見ていた人形屋の店員はフードを深く被り、その場を静かに立ち去ることにするのであった。
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