手向け花を捧ぐーREー

井上凪沙

文字の大きさ
上 下
44 / 102
第44話

「寂しい人には打って付けの人形ですね」

しおりを挟む

次の日の朝。




リチアは寮の部屋にて目を覚ます。


ベッドから起き上がり、ふと棚に飾ってあった昨日カトレアから貰った人形を手に取って昨日の夜のことを思い出す。








ガチャリ、

リチアは目を真っ赤にしつつ、顔を洗いに行こうかと寮の部屋から廊下に出た時そこにはカトレアとキキョウが立っていた。


リチア「かっ・・・カトレア様・・・!?そ、そそれにキキョウ先輩!?」

カトレア「こんばんわ。リチアさん。あら。目が真っ赤。
泣いていたのかしら?」

キキョウ「・・・今日の任務で幼なじみが刺されて未だ目を覚さないようでして」

カトレア「あら。そうなの。ランが治療してくれたのならそのうち目を覚ますと思うわ。心配はいらないわよ」

リチア「そ、そう、ですよね。ごめんなさい。
みっともないところをお見せして・・・。
あの、この事はケイには秘密にしていただけると・・・」

カトレア「泣いていた事?・・・・・・言わないわよ」

リチア「なんですか今の間は!?」

カトレア「そんなことよりね、リチアさんにお土産があるの。任務を頑張ってるご褒美だと思えばいいわ」


カトレアから差し出されたのは人形だった。


カトレア「人形屋で買ってきたの。少し変わった人形でね、電源を入れれば会話ができたりするのよ。思ってる答えが返ってこない時もあるけれど結構暇つぶし相手にはなるんじゃないかしら」

リチア「わぁ・・・人形の目って綺麗なんですね」

カトレア「気に入ってもらえたかしら?」

リチア「はい!」

カトレア「他の生徒にもリチアさんとはまた違う人形をプレゼントしたわ。あとはケイリィさんだけかしら・・・。
用はそれだけ。任務お疲れ様。ゆっくりお休みなさいね」
ヒラヒラと手を振って二人はリチアの部屋を後にした...。








リチアはその人形の背中に付いている電源のスイッチをカチッとあげる。

そしてその人形に向けて話してみることにした。


リチア「・・・お、おはよう」

「オハヨウゴザイマス」

リチア「わ、すごい、喋った・・・!」

「喋ル?」

リチア「あ、貴方のお名前は?」

「ナマエ。アリマセン」




ないんだ・・・。






会話ができる人形、かぁ。
なかなか珍しい・・・。
うーん。試しになに話そう・・・


その時、ケイリィの言った言葉を思い出した。



“その為の騎士学校なんじゃない??依頼出してみたら?カトレア様に。
兄を見つけて欲しいって”






リチア「・・・お兄様に、会いたいな・・・」
ぽつり、とリチアは呟く。


「オニイサマ?ナマエは?」

リチア「え?名前??」

「オニイサマのナマエ」


え、すごい。人形から質問来るなんて。


リチア「えっと・・・」



お兄様の名前、なんて言ったっけ・・・。
えっと、確か・・・コチョウって言って、すぐに家を出て行った勝手な兄だと親から聞かされて・・・。

そういえば私、写真の人物のお兄様しか知らない・・・。
今度お母様に会ったら本当のところのお兄様がどんな方だったのか詳しく聞いてみようかな・・・。



リチア「えっと、兄の名前は・・・」

ラン「リチアさん?」


数秒の時が止まったリチア。


リチア「せ、先輩・・・!?いいいぃいつからそこに!?」

いつの間にかその部屋の扉の方にランが立っていた。


き、気付きませんでした・・・!



ラン「一応ノックはしましたよ?鍵が空いていたので勝手に入らせてもらいました。
それより、リチアさんが手にしているソレは・・・」

リチア「こ、これは、昨日カトレア様が暇つぶし相手になればとくれたもので・・・!」

「オニイサマの名m」
リチア「わぁぁあそれはもういい、いいの・・・!」
リチアはまだ喋り出す人形の電源を慌てて切った。


リチア「この人形と会話ができるみたいでただ朝の会話をしてみただけなんです・・!決して独り言を言ってるわけではないです・・っだからあのそんな寂しい子を見るような目で見るのはやめてくださいっ!?」




やっぱり私の勝手な都合で兄を探し出して欲しいだなんてそんな依頼出せるわけないですよ・・・!
先輩達だって忙しいのに、ただ困らせるだけ・・・。





ラン「冗談ですよ。その人形のことはもちろん知っています。なんでも珍しい人形を作り売り飛ばしている凄腕の人形職人がいるとか。寂しい人には打って付けの人形ですね」

リチア「お人形さんと会話するなんて側から見たら変な人ではないですか・・・!」

ラン「そうですか?その人形、結構会話が成り立つんですよ?現に売れてますしね」

リチア「えぇ・・・?」
リチアはまじまじと人形を見る。



やっぱり瞳が綺麗・・・。だけど、何か・・・。


ラン「それはそうと、リチアさん」

リチア「は、はい!」

リチアはランに視線をやる。

あれ・・・そういえば、私、普通にラン先輩と会話・・・できてる・・・?



ラン「リチアさんにお客様がいらしてますよ」

リチア「・・・へ?」











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

決して戻らない記憶

菜花
ファンタジー
恋人だった二人が事故によって引き離され、その間に起こった出来事によって片方は愛情が消えうせてしまう。カクヨム様でも公開しています。

処理中です...