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第44話
「寂しい人には打って付けの人形ですね」
しおりを挟む次の日の朝。
リチアは寮の部屋にて目を覚ます。
ベッドから起き上がり、ふと棚に飾ってあった昨日カトレアから貰った人形を手に取って昨日の夜のことを思い出す。
ー
ガチャリ、
リチアは目を真っ赤にしつつ、顔を洗いに行こうかと寮の部屋から廊下に出た時そこにはカトレアとキキョウが立っていた。
リチア「かっ・・・カトレア様・・・!?そ、そそれにキキョウ先輩!?」
カトレア「こんばんわ。リチアさん。あら。目が真っ赤。
泣いていたのかしら?」
キキョウ「・・・今日の任務で幼なじみが刺されて未だ目を覚さないようでして」
カトレア「あら。そうなの。ランが治療してくれたのならそのうち目を覚ますと思うわ。心配はいらないわよ」
リチア「そ、そう、ですよね。ごめんなさい。
みっともないところをお見せして・・・。
あの、この事はケイには秘密にしていただけると・・・」
カトレア「泣いていた事?・・・・・・言わないわよ」
リチア「なんですか今の間は!?」
カトレア「そんなことよりね、リチアさんにお土産があるの。任務を頑張ってるご褒美だと思えばいいわ」
カトレアから差し出されたのは人形だった。
カトレア「人形屋で買ってきたの。少し変わった人形でね、電源を入れれば会話ができたりするのよ。思ってる答えが返ってこない時もあるけれど結構暇つぶし相手にはなるんじゃないかしら」
リチア「わぁ・・・人形の目って綺麗なんですね」
カトレア「気に入ってもらえたかしら?」
リチア「はい!」
カトレア「他の生徒にもリチアさんとはまた違う人形をプレゼントしたわ。あとはケイリィさんだけかしら・・・。
用はそれだけ。任務お疲れ様。ゆっくりお休みなさいね」
ヒラヒラと手を振って二人はリチアの部屋を後にした...。
ー
リチアはその人形の背中に付いている電源のスイッチをカチッとあげる。
そしてその人形に向けて話してみることにした。
リチア「・・・お、おはよう」
「オハヨウゴザイマス」
リチア「わ、すごい、喋った・・・!」
「喋ル?」
リチア「あ、貴方のお名前は?」
「ナマエ。アリマセン」
ないんだ・・・。
会話ができる人形、かぁ。
なかなか珍しい・・・。
うーん。試しになに話そう・・・
その時、ケイリィの言った言葉を思い出した。
“その為の騎士学校なんじゃない??依頼出してみたら?カトレア様に。
兄を見つけて欲しいって”
リチア「・・・お兄様に、会いたいな・・・」
ぽつり、とリチアは呟く。
「オニイサマ?ナマエは?」
リチア「え?名前??」
「オニイサマのナマエ」
え、すごい。人形から質問来るなんて。
リチア「えっと・・・」
お兄様の名前、なんて言ったっけ・・・。
えっと、確か・・・コチョウって言って、すぐに家を出て行った勝手な兄だと親から聞かされて・・・。
そういえば私、写真の人物のお兄様しか知らない・・・。
今度お母様に会ったら本当のところのお兄様がどんな方だったのか詳しく聞いてみようかな・・・。
リチア「えっと、兄の名前は・・・」
ラン「リチアさん?」
数秒の時が止まったリチア。
リチア「せ、先輩・・・!?いいいぃいつからそこに!?」
いつの間にかその部屋の扉の方にランが立っていた。
き、気付きませんでした・・・!
ラン「一応ノックはしましたよ?鍵が空いていたので勝手に入らせてもらいました。
それより、リチアさんが手にしているソレは・・・」
リチア「こ、これは、昨日カトレア様が暇つぶし相手になればとくれたもので・・・!」
「オニイサマの名m」
リチア「わぁぁあそれはもういい、いいの・・・!」
リチアはまだ喋り出す人形の電源を慌てて切った。
リチア「この人形と会話ができるみたいでただ朝の会話をしてみただけなんです・・!決して独り言を言ってるわけではないです・・っだからあのそんな寂しい子を見るような目で見るのはやめてくださいっ!?」
やっぱり私の勝手な都合で兄を探し出して欲しいだなんてそんな依頼出せるわけないですよ・・・!
先輩達だって忙しいのに、ただ困らせるだけ・・・。
ラン「冗談ですよ。その人形のことはもちろん知っています。なんでも珍しい人形を作り売り飛ばしている凄腕の人形職人がいるとか。寂しい人には打って付けの人形ですね」
リチア「お人形さんと会話するなんて側から見たら変な人ではないですか・・・!」
ラン「そうですか?その人形、結構会話が成り立つんですよ?現に売れてますしね」
リチア「えぇ・・・?」
リチアはまじまじと人形を見る。
やっぱり瞳が綺麗・・・。だけど、何か・・・。
ラン「それはそうと、リチアさん」
リチア「は、はい!」
リチアはランに視線をやる。
あれ・・・そういえば、私、普通にラン先輩と会話・・・できてる・・・?
ラン「リチアさんにお客様がいらしてますよ」
リチア「・・・へ?」
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