手向け花を捧ぐーREー

井上凪沙

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第34話

「・・・わらわの名前はデーナなどではない。カトレアよ」

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全ての人間を滅ぼすために、わらわはこんな力を得たんじゃない。
ただ、友達が欲しくて・・・。



わらわが神だと言い張るのは、わらわもこの世界を作った創造神みたいに、皆にただ凄い存在だと・・・思われたかったから・・・。









次の日の朝。
カトレアは小学校に祖父母の車で向かっていた。


「さぁ、デーナ。学校に着きましたぞ」
校門の前にてリムジンを停車させると
祖父が運転席から降りて後部座席のドアを開ける。
だが中々カトレアは車から降りようとはしなかった。


カトレア「・・・行きたくない・・・。わらわがいけなかったの・・・。神様を信じてるからこそ・・・
わらわも神様になりたいって思って・・・。」

「笑い物にされたろ?だからあまり自分は神様の生まれ変わりだとか口にしない方がいい。」

カトレアの隣に座ってる祖母がそう口にする。カトレアは祖母に視線をやる。


カトレア「馬鹿げてる?」

「・・・そうね。私は信じてないわハナッから。
そんなもの。神様がこの世界を創ったなんて言うけど、そんな証拠がどこにあるの?神様の姿をこの目で見るまでは信じられないし、存在してないのと同じよ」


存在、しない?神様が・・・?
そんな・・そんなはず・・・。
だって、昔の人は神を見たって・・・。実際に神を見た人は神様の怒りをかったとかで、全員殺されたらしいけれど・・・。



「さぁこんな話はおしまいにして学校に行きなさい。学校でもそんな馬鹿な話は大概になさいね」
と、祖母は言う。



カトレア「・・・る・・・」

「デーナ・・・?」

顔を俯かているカトレアの顔を覗き込む祖父と祖母。


カトレア「神様は・・・いる!」


顔を上げたカトレアの瞳が途端に赤くなり、
その赤い瞳を祖父母が見てしまった瞬間。

祖父母の姿が消えた。
否・・・消えたというよりは・・・




カトレアは赤い瞳をしていたがやがて通常の緑色の瞳に戻り、辺りを見渡す。
今までそこに居た祖父と祖母の姿がないことに気がつくカトレア。


カトレア「ジィヤ・・・バァヤ・・・?」


カトレアは座席に手をやれば何か毛玉のようなものに触れた気がして祖母が座っていた座席を見下ろすと、
そこには1匹の鳥が口をパクパクとさせてその座席に落ちていたのだった。




え・・・?

なに・・・これ・・・?

鳥・・・?





その時、カトレアは思い出した。
夕方の凱旋門の前にて、本物の神と会話をした時のことを。







"神の力をやる。力を使えば見た目も変わるだろう”



確かにあの時そう言った神の声が脳天に蘇った。






・・・力・・・?力って・・・?




カトレアは車の窓に映る自分を見ると若干自分の瞳が変わっていた。
カトレアは自分の瞳に触れてみる。





これが・・・わらわ・・・なのか?



力・・・わらわは今、力を使ったの・・・?


神の力ってやつを・・・。







"神になるお前の新しい名をくれてやろう。カトレア。デーナなどではない。お前の名前は今日からカトレアだ"






カトレア・・・それが・・・わらわの、名前・・・。



「ねぇあれ、デーナじゃない?」



子供達が登校してくる時間になり、校門の前を通った子供達は大きなリムジンが停めてあるのを見つけてそちらに視線をやる。




「あいつとは関わんない方がいいよ。痛い奴だからさ」

「へぇーデーナちゃんって金持ちだったのかな??」

「ちょっとちょっかいかけてみようよ」

「面白そう!」

多分カトレアと同じクラスであろう4人の女の子たちがカトレアが乗っているリムジンへと近寄った。



「おはよう。デーナちゃん。
親から送ってもらったの?」

「あれ?でも親の姿どこにも見当たらないけど。」

「ほんとだ。もしかして、見捨てられた?自分が痛い子だから」

「それだったらウケる!」

「でも車は置いてあるんだね」

「確かに。見捨てるにしても車は乗って行くんじゃない?」


「ね、ねぇ、デーナちゃん」
一人の女の子がそこで気づく。
車の近くに1匹の鳥が落ちていたのを。


「それ・・・なに・・・?と、鳥?」

「なんで・・・鳥が地面に転がってるの・・・?」


女の子らの顔はだんだん青ざめてきていて、
怯えたような目でカトレアを見ている。


そしてカトレアは車から降りて見てみれば、確かに車のすぐ近くには鳥が転がっていた。
そして、後部座席のところにも1匹の鳥・・・。
それらを見てカトレアはきっとこの鳥こそが、
祖父母なのだろうと察した。



カトレアは地面に落ちている鳥を拾い上げる。



カトレア「・・・家族よ」
ポツリと呟いた一言に女の子らは首を傾げた。





そう、唯一わらわの家族・・・。
わらわの、育ての親だ・・・。




「家族・・・?また、なに変なこと言い出してんの・・・?」


カトレア「・・・ねぇ・・・お願い・・・わらわの友達になって・・・?

そうだ。鳥になりたいって言ってたわよね・・・?
今なら・・・出来るからやってあげる。

やってみせたら、わらわと友達になってくれる・・・?」

「は、はぁ?誰が痛い子と友達になるっていうの?
てか、鳥にすら変身なんか出来なかったじゃない」

「もう付き合いきれないよ。行こ・・・」


と、カトレアに背を向けて校門を潜ろうとしたクラスの女の子達。
その去っていく女の子達の背中を見てカトレアの瞳が赤くなる。

次の瞬間、4人の女の子達は一瞬にして鳥の姿になり変わり、4匹の鳥がポタポタと地面に落ちる。

口をパクパクとさせて、多少生きてはいるようだが。


カトレアはその地に落ちた鳥に近寄って微笑むと4匹の鳥に向けてこう吐き捨てた。

カトレア「・・・わらわの名前はデーナなどではない。カトレアよ」





と、丁度そこに登校をしてきた顔に怪我を負った1人の男の子がいた。


その男の子とカトレアの視線が混じり合い、
男の子はただ無言で、地に落ちている鳥など見向きもせずただカトレアに軽くお辞儀するとそそくさと校門を潜っていった。


そんな男の子の背中をカトレアは黙って見つめていた...。









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