手向け花を捧ぐーREー

井上凪沙

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第32話

そんな瞳を向けられるのはいつ以来かしら・・・

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ディアナ「フォン・・・くん・・・早く、救急車、呼ばなきゃ・・・」

ノウゼンカズラは抱きしめている手に力を込め、ディアナを放すことはしなかった。




ノウゼンカズラ「お前の言う通り・・・俺は、俺らは化け物かもな。そう簡単に死なねぇんだから・・・」












そうだ。俺とアザレアは施設を出て、カトレア様に引き取られた直後に俺らは決めていたんだ。
この人に一生ついて行こうって。




生きていく術なんか知らないから。






カトレアがまだ幼かったアザレアとノウゼンカズラにこう告げた。







カトレア「わらわの側で、わらわと共にある事を望むか?」



そう言ったカトレア様の瞳を見た時、
この人には逆らってはいけないって思って。


俺たちの一生を、カトレア様だけに捧げて行こう。
そう、決めた俺たちは静かに頷けば
俺たちの命は、人生は終わりを告げた。


カトレア様によって殺された俺とアザレアだったが、
カトレア様に心臓を捧げる代わりにもう一度蘇らせてやると言われ、俺とアザレアはそれにただ従うだけだった。


べつに生きたいわけでもねぇし、

死にたいわけでもない。

ただ、カトレア様になら俺の人生全て捧げてもいいくらいだった。




2度目の人生を歩ませてもらった俺にはもう心臓なんてない。
カトレア様に捧げたからだ。

その代わりに新たな人生を歩むということでノウゼンカズラという花の名を頂いた。


ヒューベルクにはアザレアという花の名だ。





カトレア様がいるから、今の俺らがこうして在るんだ。
たとえカトレア様により授かった人間には使えない力を使えたり、心臓がねぇ化け物だと言われようとも。
俺はディアナにだけは・・・昔のままの自分で居たい。


カトレア様に心臓を捧げたことでそこから全然年はとらなくなったが、体の成長はするらしい。
だから今は俺より小せぇディアナの事を・・・

好きな人を守りたい。

ディアナにはずっと幸せでいてもらいたい。


俺はディアナの側にずっといることは叶わないから・・・。



カトレア様の側に、いつかは帰らなくちゃならないから・・・。









ノウゼンカズラ「いいか、ディアナ。世話になったお前だから言うんだ・・・。
騎士団が金をお前に分け与える」

ディアナ「・・・え?」

ノウゼンカズラ「その金で娘を助けてやればいい」

ディアナ「で、でも・・・本当に・・・?そんな・・・」


ノウゼンカズラ「お前には幸せでいてもらいたいからな。真っ当な道を進んでほしい。
間違った道を、もう2度と踏み外すな」



ディアナから体を離すとノウゼンカズラはポケットから封筒を取り出すとそれをディアナに差し出した。
ディアナはそれを受け取って胸に抱きしめポロポロと涙を流した。




ディアナ「・・・っ、フォン、くん・・・。あ、ありが、とう・・・!ごめんね、ごめ、なさ・・・っ」



ずっと泣いているディアナをノウゼンカズラとアザレアはディアナの背中をさすっていて泣き止むまで側についていた...。







ーーーーーー





その頃、カトレアは一人凱旋門を訪れていた。
凱旋門の両脇に象られていのは二つの鳥の像。
カトレアはその二つの鳥の像を見上げる。





カトレア「神を産んだ・・・この世の象徴とも言えるべき2体の鳥・・・。いや、もともと体は一つで頭が二つと考えるべきだから2体とは言わないわね」



ところで、
ここで昼前に職人さんと待ち合わせになっているのにまだ来ていないのね。そろそろ昼になる時間帯じゃないかしら・・・。


カトレアは1人凱旋門の前にて職人を待っていると、
猛スピードで飛ばしながらやってくる一台のトラックが居た。
スピード違反で飛ばしてるからかトラックの後ろを警官が追いかけている。






危ないわね。よくあんなんで免許とれたものね。





トラックが凱旋門に近づいてくると、丁度その真ん前を歩いている祖父祖母の姿があった。



二人はトラックの存在に遅れて気付く。
危ないと思ったカトレアはトラックの前に飛び出ると、片手でそのトラックを止めた。

どうやらトラックの運転手は居眠り運転していたようで目を擦って驚いた表情をしていた。

トラックの運転手のことは、こちらに向かってパトカーを走らせている警官に任せるとして、



カトレアが祖父祖母に振り返り、「大丈夫かしら?」
と声をかける。
祖父祖母はカトレアがトラックを片手で止めたことに驚いているのか、腰を抜かしつつもそんなカトレアを怯えた瞳で見上げていた。












あぁ・・・そんな瞳を向けられるのはいつ以来かしら・・・











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