手向け花を捧ぐーREー

井上凪沙

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第27話

「お嬢ちゃん、騎士学校に何か用事か?」

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・・・表向きは市民の平和を守るために動いているにすぎない、普通の騎士だ。

けどそんなことは僕らにとってはどうでもいいことだから・・・。


その時シナのセリフを思い返すラン。
"心なんてないんじゃないかってくらい、冷たい瞳をするね"



ええ、その通りですよ。僕は・・・僕らに心なんてものは存在していないのだから・・・。








ーーー1年前

殺し屋の1人であるエルマは大きなキャリーケースを引いて空港の飛行機乗り場へとやってくる。
飛行機に乗ろうとしたところ、仲間のハノカがエルマの見送りへと一緒に来ていた。


ハノカ「ほんとうに、いくんですか?」

エルマ「うん。行くよ。キシガッコウがどんなところかしりたいしこのめでまじかでみてみたいんだ。
そうふあんそうなカオしないでよ。

だいじょーぶ。ようがすんだらすぐかえってくるから」


その言葉を残し、エルマは飛行機の中へと消えた。それをハノカは飛行機が飛び立って見えなくなるまで見送っていた。





飛行機に乗ること役数時間経ち、エルマは飛行機から降りて地図を見ながら騎士学校がある場所までキャリーケースを引きながらも歩きまわることに。


さすがに地図見ても位置まではわからない為そこらを歩く近くの人に聞いてみることにしたエルマ。


エルマ「あの、すいませーん」
エルマが声をかけたのは老人とお姉さんの2人であった。

エルマ「えっと、キシガッコウってどこですか?」

エルマがそう尋ねればお姉さんは丁寧に教えてくれた。どうやらこの付近にあるのは確かのようだった。地図を見て歩いてきたはいいが騎士学校の場所までは分からなかったから。


「お嬢ちゃん。騎士学校に何か用事か??」

老人がエルマにそう問う。お嬢ちゃんと呼ばれたエルマは訂正させるのも面倒になったからか苦笑しつつも、

エルマ「あー、はい・・・キシガッコウってかってにはいったらダメなんですか?」
と頭を掻きながら言う。


「騎士学校は生徒かもしくは騎士様しか入れんよ」

そんなことを言う老人にエルマは項垂れる。

エルマ「えぇそんなぁ、きしサマにあいにわざわざとおいトコからきたのになぁ・・・」

「そうなのね・・・まぁ騎士団に憧れてる民は少なく無いから・・・。あ、でも確か今騎士様は朝の任務中だからここで待っていればもうじきお見えになる時間帯かもしれないわね」

エルマ「ほんと!?」

そんな話をお姉さんから聞くと、そこらを歩いてる市民がざわつきはじめ、エルマはなんだろうと視線をそちらに向けた。


「あら、噂をすればなんとやらね」



「あ!騎士団よ!」
「お疲れ様です!」



こちらに向かって歩いてくる騎士団の姿が見えるなり市民たちが群がっていた。
そしてそんなカトレア達へ1人の女性が駆け寄った。



「騎士様が任務お疲れ様です!
騎士様が解決して下さったお陰でうちの息子が麻薬の売人をやめてくれたんですよ。悪い大人に騙されてばかりな息子が騎士様の一言でこうも言うこと聞くなんて・・・。私の言うこと一切聞く耳も持たなかったのに・・・」

カトレア「奥さん。その息子に伝えてくれるかしら?次は目を瞑ってはやらんぞとね?」

「は、はい!」

そうして女性はカトレアに手を振りながらその場を立ち去っていく。カトレアも手を振りかえしていると、次にエルマがカトレア達に走り寄った。



エルマ「あ、あの!はじめまして!!あの、ボク、エルマ=フィルアム=シュヴァインといいます!きしだんにあうためにきました!きしサマのかつやくテレビでいつもみてます!ずっとおーえんしてました!」


エルマはカトレアの手を取り、元気すぎるエルマに少々引きぎみになるカトレア。


カトレア「おお・・・そ、そう。貴方一人で来たのかしら?」

エルマ「ハイ!キャリーケースのなかみ、みやげなんでもらってください!というかキャリーケースごともらってください!」

エルマはキャリーケースをカトレアに差し出す。


ラン「そんな大きなキャリーケース、持ち帰るのがめんどくさいだけでは」

エルマ「よくわかりましたね!」

ノウゼンカズラ「ゴミを押し付けんな」

エルマ「ゴミじゃないです!」

カトレアは困り顔になりながら、キキョウが「カトレア様如何なさいますか」と聞く。


カトレア「まぁ。せっかくここまで会いにきてくれわけだし、無下には扱えないわ。
それじゃそのキャリーケースはこちらで預かることにして、少しお話でもどうかしら?」

エルマ「え!ボクはキャリーケースをわたしたらかえるよていでいたんですけど~・・・」

カトレア「そんな時間はとらせないわ。一緒にティータイムでもしましょう?」




カトレアがそう言うものだから、エルマは少し話をするだけならということでお言葉に甘えてカトレア達と共に騎士学校に入ることとしたエルマだった。














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