いずれ剣聖にいたる帝国の守銭奴

十二田 明日

文字の大きさ
上 下
11 / 29

11

しおりを挟む
 3年生は自由登校となり、光琉は仕事が忙しく、度々学校を休むようになった。

 と言っても毎朝迎えに来て学校まで送ってくれるし、帰りは光琉が来れない日も、香坂家の運転手さんが迎えに来てくれる。

「日向、絶対に1人にならないって約束して」

 学校に着き、車を降りてから光琉に抱きしめられフェロモンを付けてもらう。俺の家の前と、毎朝2回付けてくれるのが嬉しい。と実はこっそり思っている。

「分かってる」
「それ、毎日やってて飽きないのか?」

 毎朝俺を玄関で待っていてくれる宇都宮からしたら、鬱陶しくて仕方ないかもしれないけど。

「光琉も気を付けてな」
「うん。行ってくるね」
「うん…」

 離れ離れになるのが寂しい。

 光琉とは付き合う前からずっと一緒にいて…そりゃあ休みの日とか会わない日もあったけど、学校で一緒にいない日なんてなかったら。

「ごめんね? 明日は学校休まずに済むと思うから」
「うん…」

 ダメだって分かっているのに、光琉の服を掴む手を離せない。 

「あぁ~! 日向が可愛すぎる!!」

 もう一度抱きしめてほしくて光琉に念を送ると、気持ちが通じて抱きしめてくれた。

「日向、そろそろチャイムなるぞ」
「先が思いやられるな」
「大学では学部が違って離れることも増えるのになぁ」

 と、いつの間にか近くにいた一樹と宇都宮が話しているけど、聞こえないふり。

「はいはい。もうピヨちゃん行くよ~」
「はぁい…」

 俺の頬に手を当て額にキスをしてから、行ってくるねと光琉が車に乗り込んでしまった。

「気を付けてな」

 道中もだけど、大人の女性とかオメガとかにも…。

 あーあ、行っちゃった。

「オメガもフェロモンが付けられたらいいのに」

 つい口走ってしまった言葉に、宇都宮が答えてくれる。

「付けられるぞ?」
「え!? そうなのか?」

 って…そりゃそうか。オメガのフェロモンにも匂いがあるんだから。

「でも薬飲んでたら分かんないじゃん」
「まぁな」
「期待させんなよな」

 しかも番になったら番相手にしか匂いも……それ以前の問題があったわ。

「あのさ。オメガのフェロモンってアルファみたいに威嚇? できるのか?」

 一樹、俺も今それに気が付いたよ。

「匂いがつくだけだな」
「だよな。威嚇ができたらいいのに」

 光琉が惑わされることなんてないって分かってる。でも、心配なんだ。

「ピヨちゃんさ、運命の番なのに心配しすぎ」
「………あっ……」

 世のオメガが心配する、番のアルファの運命の番。俺、その心配をする必要なかったんだった。

「あはは~」
「本当にさ、お前ら恵まれてる自覚を持てよな」
「ごめんごめん」
「光琉も光琉で毎朝俺に威嚇してくるし。なら任せるなって話しだよ」

 宇都宮に威嚇してたんだ。それは全く気付かなかったわ。

「それより日向。高校卒業したら同棲するんだよな?」
「その予定。でも俺、まだ光琉のご両親に挨拶してないんだよな」

 番うってことは先に結婚があるってこと。その逆も然り。それに俺達は結婚の約束もしているわけで…

「番う前だしそうなるだろ」
「? でも俺の親には挨拶してくれたぞ?」

 そういうのって先に挨拶するもんじゃないのか?

「いや、当たり前だから。もし俺が光琉でも同じようにする」

 なぜ?

「分かった! いくら家族でも番う前のオメガを自分以外のアルファに会わせたくないんだ!」

 1人で会うんじゃなく光琉もいるのに? アルファって心配性だよな。

「なんでピヨちゃんより一樹の方が理解が早いんだよ」
「日向がこれだからな。周りがしっかりしちゃうんだって」
「なるほど。それは言えてるな」

 軽くディスられてる気もするが。

「でだ。話し戻すけど、家決まったのか?」
「あ、うん。大学の近くにした」

 イコール高校の近くってことだけど、大学の正門に近い場所に決めたんだ。

「賃貸?」
「えっと…」
「そんな訳ないだろ。な、ピヨちゃん?」
「光琉が……買っちゃった」
「は!?」

 うん。そりゃ一樹も驚くよな。俺も驚いたし。

 俺、煩すぎなければどこでもって希望を出しちゃったから…ここなら煩くないでしょ? ってマンションの最上階を買ったらしい。

「遊びに行きたい!」
「いいけど」
「あー、光琉の許可をとってからにしろよ。多分一樹は大丈夫だと思うけど。嫌な顔はされるだろうな」
「おっけ」

 なんで?

「………ピヨちゃん。アルファのこともう少し勉強しような」

 そういえば家に一樹がよく来るって前に話したら、光琉、嫌そうな顔してたかも。なんとなくそれからは家に呼ばないようにしてたんだった。

「アルファって大変だな」

 まぁ…俺も家族以外は一樹と蓮、宇都宮と稜ちゃん以外は呼びたくないけどな。



しおりを挟む
本作にはまだまだ改良の余地があると思っております。『ここがちょっと分かりにくいな』『ここはもっとこうした方がいいんじゃないか』等々、どのような意見でも構いませんので、コメントをいただけたらと思います。                  十二田明日
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
小説家になろうでジャンル別日間ランキング入り!  世界最強の剣聖――エルフォ・エルドエルは戦場で死に、なんと赤子に転生してしまう。  美少女のように見える少年――アル・バーナモントに転生した彼の身体には、一切の魔力が宿っていなかった。  忌み子として家族からも見捨てられ、地元の有力貴族へ売られるアル。  そこでひどい仕打ちを受けることになる。  しかし自力で貴族の屋敷を脱出し、なんとか森へ逃れることに成功する。  魔力ゼロのアルであったが、剣聖として磨いた剣の腕だけは、転生しても健在であった。  彼はその剣の技術を駆使して、ゴブリンや盗賊を次々にやっつけ、とある村を救うことになる。  感謝されたアルは、ミュレットという少女とその母ミレーユと共に、新たな生活を手に入れる。  深く愛され、本当の家族を知ることになるのだ。  一方で、アルを追いだした実家の面々は、だんだんと歯車が狂い始める。  さらに、アルを捕えていた貴族、カイベルヘルト家も例外ではなかった。  彼らはどん底へと沈んでいく……。 フルタイトル《文字数の関係でアルファポリスでは略してます》 魔力ゼロの忌み子に転生してしまった最強の元剣聖は実家を追放されたのち、魔法の杖を「改造」して成り上がります~父が老弱して家が潰れそうなので戻ってこいと言われてももう遅い~新しい家族と幸せに暮らしてます こちらの作品は「小説家になろう」にて先行して公開された内容を転載したものです。 こちらの作品は「小説家になろう」さま「カクヨム」さま「アルファポリス」さまに同時掲載させていただいております。

処理中です...