ピロティー

いまさら小次郎

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20:00, Friday アルバートホテル 7階にて

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結局、どうしたら良かったんだろう。
毎度毎度繰り返される、終わりの見えない期待と、不安。
満たされない心を抱えたまま人を変えても、また、同じことの繰り返し。
人を愛することがどういうことか。
もう、分からなくなっていた。

「…あの。反対側に移っても良いですか」
「くっついていたいのに」
「…これじゃ、身動きが取れない」

大の男が2人、狭いバスタブを満杯にしている。
身体を合わせるようにして浸かるのはさすがに息苦しいと感じて、
真は身体を起こし、弘と向かい合わせになるように座り直した。

「まぁ…いっか。これはこれで。まこの体が見られるから」

残念そうな顔をしながらも、弘は小さく笑っていた。
濡れた前髪を後ろにかき上げて押し固める姿は、
暗い部屋では見られなかった”夜の男”の表情そのものだった。
呆れる気持ちより先に、震えるような溜息が口から漏れて出てきた。
何を話したら良いんだろう。
明るい浴室の元では全てが曝け出されて、隠れる場所がない。
弘の視線が、気になる。
こんなことなら、こっち側に移ってこない方が良かったんじゃないか。
少しの後悔が、真の頭をよぎる。

また溜息を一つ吐くと、弘が真の後ろに回り込もうと身を乗り出してきた。
張られた湯がざぶん、と大きな音を立てる。

「だから、狭いって」
「狭くても良い。そっち、行きたい」

結局、先ほどと同じ体勢になってしまった。
後ろから腹に手を回され、身体を固定される。
わずかでも抵抗を示そうと身体を前傾させて、
なるべく背中を弘にくっつけないようにした。

「…そうやって離れてたら、後ろから突っ込むよ」

低い声で唸られて、慌てて体勢を戻した。
弘は冗談だよ、と笑いながら、回していた腕で真の身体を引き寄せた。
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