ピロティー

いまさら小次郎

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20:00, Friday アルバートホテル 7階にて

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「…ねぇ。”分からない”ままじゃ、だめなの?」
「え?」

肩越しに呟かれた言葉に、真が振り返る。

「まこが求めているもの。”分からなかった”じゃ、だめ?」
「それじゃあ…ここに来た意味が……」
「本当に?”俺に会いに来た”っていうのじゃ、だめなの?」
「え…」
「そういう意味の持たせ方も、あると思うんだけどなぁ…」

真の、分かりやすいほど大きく見開かれた目は、
驚きで表情を失っている。

こういうところだ。
こういうところが、信用できないんだ。
少し気を許したかと思うと、すぐ思わせぶりな事を言う。
甘い笑顔、甘い声、甘い言葉。
夢の中の男は、人を酔わせる術を知っている。

真が固まっているその隙に、弘はゆっくりと掌を胸元に持ってきた。
指先で、胸の先を軽く撫で上げる。

「あ、ちょっと…」
「そうか…だめか。だめかぁ」
「いや…だめっていうか……うゎっ」

突然感じた違和感に、真は背中を弓状にしならせた。
湯船の中で張り詰める弘が、腰元に当たっている。
湯の中でも分かる程熱を持ったそれは、少しばかり真に焦燥感を与えた。

「ひ、弘…」
「…入れないから。当てさせて。当てるだけ」

入れられる。そう思っただけに、思わず安堵の息が漏れ出た。

「嫌なら嫌って言って良いんだよ。嫌がることはしない」
「そう言ったって、触るだろ… さっきだって…」
「ふふふ…バレたか」

弘は笑いながら、バスタブの端を両手で掴み、体勢を立て直した。
右掌で背後から真の目を覆って視界を塞ぐと、
胸を弄んでいた手をそのまま真の足の間に滑り込ませる。

「何も考えなくて良いから。ただ、感じてみて。少しだけで、良いから」
「ひ…ろし………」
「俺は、触りたい。まこに触りたいよ」
「それ…ずるくないか…」

そんな言い方されたら、断れない。
結局、弘の良いようにもっていかれている気がする。

「…こういうの、慣れ、ない…」
「知ってる。でも…まこもずるいよ。嫌がってるみたいに、見えないから」

夜の男の恐ろしい魔力に、身体が飲み込まれていく。
理性を盾に応戦しようとも、壁はいとも簡単に崩されていく。
目的を手放して、ただ溺れていくのが怖い。
下半身に受ける甘い刺激はまた先ほどの疼きを思い出して、
引けた腰が弘に圧をかけてしまう。
左耳の後ろで、小さく息を吐く音が響いた。
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