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第六章 夢であり、幻であっても
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突然途絶えた電話を片手に、
孝之は立ち尽くしていた。
静まり返った自室に、
微かな呼吸の音がこだまする。
ベッドルームの角で、
優しく光る間接灯に目をやる。
景色はいつも通り、何一つ変わっていない。
ベッドの縁に、ゆっくりと腰を下ろした。
いつの間に流れ出た大粒の汗が、顎を伝う。
手の甲で顎を擦り、大きく息を吸い込んだ。
「シャワー…」
息を吐き出すように、呟く。
のそりと立ち上がると、少し目眩がした。
手にしていた携帯をベッドに投げ出し、
おぼつかない足で浴室に向かう。
美容液を含んだ顔用のマスクも
風呂上りに身体に塗るボディローションも
いつもなら欠かさず用意するはずだった。
そんなことなど遠くに置き去りにして、
浴室の扉を閉ざす。
冷水のシャワーを、頭から浴びた。
耳の裏にあたるシャワーの音は
胸の鼓動の音にかき消される。
勢いよく床に叩きつけられる水しぶきを
しばらく見つめて、壁に寄り掛かった。
"タカユキ…タカユキ……"
薄茶色の髪に、青色の瞳。
白い肌と、赤い舌。
桜の木の下で肌を重ねた夢を、
生々しく脳裏で再現する。
熱は胸の鼓動と共に高鳴りを増し
孝之の身体を侵食していった。
「龍司…」
腰元に、手を添えた。
すっかり熱を帯びたその場所は
孝之の欲望を否応なく見せつけてくる。
シャワーの音を引き裂くように
吐息が、浴室にこだました。
孝之は立ち尽くしていた。
静まり返った自室に、
微かな呼吸の音がこだまする。
ベッドルームの角で、
優しく光る間接灯に目をやる。
景色はいつも通り、何一つ変わっていない。
ベッドの縁に、ゆっくりと腰を下ろした。
いつの間に流れ出た大粒の汗が、顎を伝う。
手の甲で顎を擦り、大きく息を吸い込んだ。
「シャワー…」
息を吐き出すように、呟く。
のそりと立ち上がると、少し目眩がした。
手にしていた携帯をベッドに投げ出し、
おぼつかない足で浴室に向かう。
美容液を含んだ顔用のマスクも
風呂上りに身体に塗るボディローションも
いつもなら欠かさず用意するはずだった。
そんなことなど遠くに置き去りにして、
浴室の扉を閉ざす。
冷水のシャワーを、頭から浴びた。
耳の裏にあたるシャワーの音は
胸の鼓動の音にかき消される。
勢いよく床に叩きつけられる水しぶきを
しばらく見つめて、壁に寄り掛かった。
"タカユキ…タカユキ……"
薄茶色の髪に、青色の瞳。
白い肌と、赤い舌。
桜の木の下で肌を重ねた夢を、
生々しく脳裏で再現する。
熱は胸の鼓動と共に高鳴りを増し
孝之の身体を侵食していった。
「龍司…」
腰元に、手を添えた。
すっかり熱を帯びたその場所は
孝之の欲望を否応なく見せつけてくる。
シャワーの音を引き裂くように
吐息が、浴室にこだました。
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