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第六章 夢であり、幻であっても

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「お前の寝るところは……あっち」

ベッドの上に座るサクラをゲージに戻すと、
再びベッドの上にうつ伏せに倒れ込んだ。
全身の力を抜いて枕に顔を埋め、
大きく息を吸う。

顔が熱い。
身体が、熱い。

熱に浸された身体は
龍司の心を絡めとり、ベッドに縛り付ける。
汗ばむ右手を腰元に添えると、
"あの"大きな掌が
自分を包み込んだ感覚を思い出してしまう。

「なん…で…こんな……」

もう何度も、夢に見てきた。
その度に消し去ろうと抗ってきた幻に、
手を伸ばしてしまう。
自分への苛立ちとは裏腹に
押し寄せる高まりに飲み込まれてしまう。

添えた右手を直接肌に沿わせると、
すっかり熱を持って形づいた腰元が
指に触れる。

震えるように息を吐いて、
指を丸め込んでいく。

「……孝之……孝…之…………」

押し殺した声は、
刺激を受けるたびに細切れに吐き出されていく。

枕に何度も顔を擦り付けながら、
夢と幻の間を行き来していた時だった。
ベッドの端に置いておいた携帯が鳴り響いた。

龍司はびくりと肩を揺らし、目を見開いた。
視線の先で、画面がけたたましく光っているのが見える。
しばらく様子を見ていたが、鳴り止む様子はない。

朦朧とする意識の中、
ゆっくりと携帯を手に取り、
画面に目をやった。

"孝之"

あとどれだけ
苦しめば良いのだろう。

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