55 / 88
第四章 夢か、幻か
55
しおりを挟む
強い風の音は何の前触れもなく吹き立ち、
耳横を掠めていく。
どういうわけか、
今日は初めから男に身体を包まれるところから夢が始まった。
勢いよく後ろを振り返ると、
あの男の、鼻から下の輪郭が見て取れた。
男は厚い胸板を龍司の背中に押し当てている。
夢の中とは思えないほど現実味を帯びた体温と胸の鼓動が身体に響く。
男はいつにも増して身体を龍司に寄せ、
離れようとしない。
「リュウジ……」
聞いたこともない、低めの声。
すぐ耳元で囁かれると首筋が強張った。
「何で、俺の名前を知ってるんだ。何で…夢に出てくるんだ」
「リュウジ…あいたい」
男はいつもと同じことを呟きながら、
龍司の首筋に顔を近づけてきた。
龍司は慌てて首をひねり男の腕から離れようとしたが、男は腕に力を込めてますます龍司の身体を抱え込む。
「お、れだって…会って、お前が誰なのか聞きたい。お前がサクラを捨てたのか?」
そう尋ねると、男は龍司の唇に自分の唇を近づけてきた。
ぼやけた男の輪郭は鼻筋を通って下まつげまで捉えることはできても、相変わらず全容ははっきりしない。
龍司は顔を振り切って逃れようとしたが、
顎を掴まれ、口を塞がれる。
驚くほど熱い舌が口の中に割り入ってきた。
舌を唇で挟まれると、こめかみの辺りがびりりと震えた。
口元を弄ばれながら、
男の手はいつもの通り龍司のセーターを捲り上げ、素肌に触れてくる。
「 おまえをずっと、さがしてる…」
「さがしてる…なら…なんでこんな…こと…」
「リュウジ…リュウジ…」
龍司の胸に添わされた男の掌は、ゆっくりと腹の下に滑り落ちてきた。
耳横を掠めていく。
どういうわけか、
今日は初めから男に身体を包まれるところから夢が始まった。
勢いよく後ろを振り返ると、
あの男の、鼻から下の輪郭が見て取れた。
男は厚い胸板を龍司の背中に押し当てている。
夢の中とは思えないほど現実味を帯びた体温と胸の鼓動が身体に響く。
男はいつにも増して身体を龍司に寄せ、
離れようとしない。
「リュウジ……」
聞いたこともない、低めの声。
すぐ耳元で囁かれると首筋が強張った。
「何で、俺の名前を知ってるんだ。何で…夢に出てくるんだ」
「リュウジ…あいたい」
男はいつもと同じことを呟きながら、
龍司の首筋に顔を近づけてきた。
龍司は慌てて首をひねり男の腕から離れようとしたが、男は腕に力を込めてますます龍司の身体を抱え込む。
「お、れだって…会って、お前が誰なのか聞きたい。お前がサクラを捨てたのか?」
そう尋ねると、男は龍司の唇に自分の唇を近づけてきた。
ぼやけた男の輪郭は鼻筋を通って下まつげまで捉えることはできても、相変わらず全容ははっきりしない。
龍司は顔を振り切って逃れようとしたが、
顎を掴まれ、口を塞がれる。
驚くほど熱い舌が口の中に割り入ってきた。
舌を唇で挟まれると、こめかみの辺りがびりりと震えた。
口元を弄ばれながら、
男の手はいつもの通り龍司のセーターを捲り上げ、素肌に触れてくる。
「 おまえをずっと、さがしてる…」
「さがしてる…なら…なんでこんな…こと…」
「リュウジ…リュウジ…」
龍司の胸に添わされた男の掌は、ゆっくりと腹の下に滑り落ちてきた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる