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第三章 出会い
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「覚えが…ないです」
男は静かに呟くと、その場を立ち去ろうとした。
「あ、ちょっと…ちょっと待って」
行ってしまう。
今を逃したら、
もう会えなくなるかもしれない。
孝之は、慌てて男を呼び止めた。
振り返った男の顔は、
明らかに不快感を示していた。
「あなたが拾ったその猫に、会わせてもらえませんか」
「…は?」
男は目と口を同時に開いた。
自分が何を言っているかは分かっている。
けれど今はそうすることしか思いつかなかった。
「夢に、何度も出てきたんです。それで、その…子猫に謝りたくて。
勝手な事を言っているのは分かってる。けどどうか、お願いします」
孝之は、男に深々と頭を下げた。
また強い風が前から吹き込み、
孝之の前髪を大きく乱した。
前方から男の小さな溜息が聞こえてきた。
初対面の人間に自分の飼い猫に会わせてくれと言われて、
はいどうぞと言ってもらえるとは思っていない。
ただ、返事を待つしかなかった。
「…松島、龍司です」
孝之は勢い良く頭を上げた。
「松島…さん…」
”天使”の、いや、飼い主の名前だ。
孝之は龍司の、少し息を含んだような声に身体を震わせた。
夢で何度も聴いた”あの声”で、やっと名前を知ることが出来た。
「…うち、ここから歩いて5分のところにあるので」
「…行ってもいいんですか」
「来たくなければ…いいです」
「行きます。ありがとうございます。ありがとう」
孝之は、もう一度深く頭を下げた。
”天使”に会える。
ようやく、話をすることが出来そうだ。
男は静かに呟くと、その場を立ち去ろうとした。
「あ、ちょっと…ちょっと待って」
行ってしまう。
今を逃したら、
もう会えなくなるかもしれない。
孝之は、慌てて男を呼び止めた。
振り返った男の顔は、
明らかに不快感を示していた。
「あなたが拾ったその猫に、会わせてもらえませんか」
「…は?」
男は目と口を同時に開いた。
自分が何を言っているかは分かっている。
けれど今はそうすることしか思いつかなかった。
「夢に、何度も出てきたんです。それで、その…子猫に謝りたくて。
勝手な事を言っているのは分かってる。けどどうか、お願いします」
孝之は、男に深々と頭を下げた。
また強い風が前から吹き込み、
孝之の前髪を大きく乱した。
前方から男の小さな溜息が聞こえてきた。
初対面の人間に自分の飼い猫に会わせてくれと言われて、
はいどうぞと言ってもらえるとは思っていない。
ただ、返事を待つしかなかった。
「…松島、龍司です」
孝之は勢い良く頭を上げた。
「松島…さん…」
”天使”の、いや、飼い主の名前だ。
孝之は龍司の、少し息を含んだような声に身体を震わせた。
夢で何度も聴いた”あの声”で、やっと名前を知ることが出来た。
「…うち、ここから歩いて5分のところにあるので」
「…行ってもいいんですか」
「来たくなければ…いいです」
「行きます。ありがとうございます。ありがとう」
孝之は、もう一度深く頭を下げた。
”天使”に会える。
ようやく、話をすることが出来そうだ。
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