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第一章 どこかでみた光景

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「タカユキ…」  

「…何でこういう時、都合良く体が動かないんだろうな。」

昨日と同じように”天使”に覗きこまれるような形で
その夢は始まった。
気のせいか、昨日よりも”天使”の表情が
はっきりした縁取りで見て取れる。
目的を持つと、見えないものも見えてくるようになるのか。

今日の”天使”は何故だか浮かない顔をしていた。
こちらを案じているのか、
それとも何かに悲しんでいるのか。
いずれにしろこんな表情を見るのは初めてだ。

「何か、あっ……!」

何かあったのか聞くより先に、例のくしゃみが吹き出した。
くそ、ムードがブチ壊しじゃねぇか。

ムード。
そんなものをいつの間にか大事にしてたのか。
たかが夢なのに、気遣うことが多すぎる。

”天使”は弱々しい笑顔を見せた。
それも、やはりいつものような明るさはなかった。
何かを暗示しているようで、少し不安になった。

「何か、あったのか」
「…タカユキ」
「ここにいる」
「タカユキ…」

昨日と同じように”天使”がゆっくりと近づいてきた。
孝之の胸の上に両手を乗せた後身体を合わせるのかと思ったが、そうではないらしい。
そのまま上半身を屈めて、顔を孝之の顔に近づけた。

互いの鼻先を掠める程の距離感に、
孝之が身体を強張らせる。
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