27 / 40
27.引越しと掃除と約束
しおりを挟む
次の日。
酔い潰れた龍の宿を後にし、3人で冒険者ギルドへ行き、家の支払いを済ませて鍵を受け取ってきたので、今日から住む我が家へ向かった。
ルーン通りには色々な店や民家がある。冒険者ギルドも酔い潰れた宿ともそんなに離れていない。そんなルーン通りにある我が家は立地としてはとても良いんじゃないだろうか。
家の前に着いたので、改めて外から我が家を見つめる。
庭もあるから子ども達が遊んだりするのにもちょうどいい。
こんな良い家を紹介してくれたジェイドさんには感謝だ。
「きょうからここがおうちになるの?」
左側にいたノワールが繋いだ手を引きながら聞いてきた。
「そうだよ。今日からここが俺とノワールとルーチェの3人の家だよ。もし、気に入った部屋があったらそこを2人の部屋にしようか」
「いいの!?」
「もちろん」
「やったー!!!ルー!やったね!ぼくたちのおへやだって!!」
「うん。…ゆづる、ありがと」
ノワールは両手を上げてぴょんぴょんと跳ねて喜び、ルーチェは俺と手を繋いだまま顔を上げたことでローブに隠れていた顔が見え、嬉しそうな表情をしていた。
2人とも嬉しそうでよかった。
「俺達は家族だからね。あたりまえだよ。でも、お部屋を決める前にやらなくちゃいけないことがある。それはね……」
「「………?」」
2人はじっと俺の顔を見つめ、首を傾げる。
少し間をおいた後。
「家のお掃除と引越しだ!」
俺が少し大きめな声でそう言うと、ノワールは「わぁ~!」と言いながら、2人で小さな手をパチパチと叩いた。
家の鍵を開けて中へと入る。昨日も思ったが、やはり少し埃っぽさがある。家全体を掃除するとなると結構な時間がかかってしまう。普通に掃除しようとすると一日では終わらないだろう。でも、問題はない。風魔法と水魔法を利用すればあっという間に終わる。
でも、その前に……。
小さめなサイズの布を3枚取り出す。四角形の布を折りたたんで3角の形にして、ノワールとルーチェに声をかける。
「ノワール、ルーチェ、2人とも俺に背中を向けて立ってくれる?」
「なにするの?」
「………?」
「お掃除すると埃が舞うから、それを吸い込まないように鼻と口をこれで塞ぐんだよ。自分でやるのは難しいだろうから俺がやるね」
「わかった!」
「ん」
2人が俺に背を向けたので2人の後ろにしゃがみこんで、三角にした布を鼻と口を覆うようにして布の端と端を頭の後ろで結んだ。
日本でいうマスクの代わりだ。
「よし!これで大丈夫かな。どう?」
「うーん……」
「…くるしい」
俺はマスクで慣れてるけど2人は経験がないからか、鼻と口を覆う布を手で触り居心地が悪そうだ。
でも、これを付けないで掃除をして舞った埃を吸い込んでしまうと、埃と一緒に体に害のある菌とかも吸い込んでしまって病気に繋がる可能性もある。特に2人はまだ幼くて免疫も大人と比べて未熟なはずだ。だから、2人には掃除が終わって家が綺麗になるまでは我慢して貰うしかない。
「病気にならないためだから苦しくても少しだけ我慢してね。魔法を使えばお掃除も早く終わるから」
「まほう!!!?」
ノワールが目をキラキラさせながら顔を見上げてきた。ルーチェも口には出さないけど、興味あります!というのが顔に出てる。
どうやら2人は魔法が気になるらしい。
一応リエゾンからレガメに来るまでの道中で、魔物が出て戦闘になった時は魔法を使っていたけど、2人は危ないから馬車の荷台にいるように言ってたから俺が実際に魔法を使っているのを見ていない。……いや、ちょっとしたやつは見たか?焚き火をするのに火魔法を少し使ったりしたからそれは見ているはずだ。でも、派手だったり規模が大きいような魔法は見ていない。
だからか、2人は魔法が気になるみたいだ。子供ながらの好奇心というのもあるだろう。
「魔法が気になる?」
「うん!」
「ん」
「そっか!じゃあ、実際にやってみるから見ててね。掃除だからそんなに派手なものじゃないけど…」
戦闘時のような派手な魔法ではないが、それでも2人は気になるみたいだ。目がキラキラしている。
そんな2人を見て微笑ましく思いながら、魔法を行使する。
まずは風魔法で床や家具などに溜まっている埃を浮かせて消し去ってから、水魔法で染み付いた汚れ等も含め全て洗い流す。そして、早く乾くようにまた風魔法を使えば終わりだ。
「こんな感じかな」
難しいことではないのであっという間に終わってしまった。埃や汚れが落ちた部屋内はさっきよりも雰囲気が明るく感じる。
試しにリビングと併設されたキッチンをやってみたけどいい感じにできた。
横にいた2人を見ると、ノワールは「すごぉい!」と言ってパチパチと手を叩き、ルーチェは目を少し見開き驚いている様子だった。
「きれい……」
「ん?…うん、そうだね。綺麗になったね」
「…ちがう」
「ん?」
「ゆづるのまほう、きれい」
ルーチェが呟いたので、部屋が綺麗になったという意味かと思ったが違った。どうやら、俺の使った魔法が綺麗と言いたかったらしい。
「そっか。ありがとう」
「………ぃぃな…」
小さな声だったけど、確かにルーチェが「いいな」と言ったのが聞こえた。
もしかして……
「ルーチェは魔法好き?」
「うん」
「ルーチェもやってみたい?」
そう尋ねると、ルーチェは顔を勢いよく俺の方に向けた。
「やりたい」
「…わかった。それじゃあ、今度魔法について教えてあげようか?」
「……いいの?」
「もちろん。ルーチェがやりたいなら俺が教えるよ」
ルーチェは少し間をあけた後、「まほう、やりたい」と答えた。
俺はルーチェと同じ視線の高さになって、「約束ね」と、ルーチェと右手の小指を絡ませた。
すると、ルーチェは目を細めてふわりと笑顔を浮かべた。
すごく嬉しそうだ。
そんな俺とルーチェを傍で黙って見ていたノワールが、「ぼくも!」と言ってきたので、今度3人で魔法の勉強をしようと約束をして、ノワールとも左手の小指を絡ませた。
小指を絡ませて3人で約束をした後は、家全体を同じように風と水の魔法で綺麗にした。
酔い潰れた龍の宿を後にし、3人で冒険者ギルドへ行き、家の支払いを済ませて鍵を受け取ってきたので、今日から住む我が家へ向かった。
ルーン通りには色々な店や民家がある。冒険者ギルドも酔い潰れた宿ともそんなに離れていない。そんなルーン通りにある我が家は立地としてはとても良いんじゃないだろうか。
家の前に着いたので、改めて外から我が家を見つめる。
庭もあるから子ども達が遊んだりするのにもちょうどいい。
こんな良い家を紹介してくれたジェイドさんには感謝だ。
「きょうからここがおうちになるの?」
左側にいたノワールが繋いだ手を引きながら聞いてきた。
「そうだよ。今日からここが俺とノワールとルーチェの3人の家だよ。もし、気に入った部屋があったらそこを2人の部屋にしようか」
「いいの!?」
「もちろん」
「やったー!!!ルー!やったね!ぼくたちのおへやだって!!」
「うん。…ゆづる、ありがと」
ノワールは両手を上げてぴょんぴょんと跳ねて喜び、ルーチェは俺と手を繋いだまま顔を上げたことでローブに隠れていた顔が見え、嬉しそうな表情をしていた。
2人とも嬉しそうでよかった。
「俺達は家族だからね。あたりまえだよ。でも、お部屋を決める前にやらなくちゃいけないことがある。それはね……」
「「………?」」
2人はじっと俺の顔を見つめ、首を傾げる。
少し間をおいた後。
「家のお掃除と引越しだ!」
俺が少し大きめな声でそう言うと、ノワールは「わぁ~!」と言いながら、2人で小さな手をパチパチと叩いた。
家の鍵を開けて中へと入る。昨日も思ったが、やはり少し埃っぽさがある。家全体を掃除するとなると結構な時間がかかってしまう。普通に掃除しようとすると一日では終わらないだろう。でも、問題はない。風魔法と水魔法を利用すればあっという間に終わる。
でも、その前に……。
小さめなサイズの布を3枚取り出す。四角形の布を折りたたんで3角の形にして、ノワールとルーチェに声をかける。
「ノワール、ルーチェ、2人とも俺に背中を向けて立ってくれる?」
「なにするの?」
「………?」
「お掃除すると埃が舞うから、それを吸い込まないように鼻と口をこれで塞ぐんだよ。自分でやるのは難しいだろうから俺がやるね」
「わかった!」
「ん」
2人が俺に背を向けたので2人の後ろにしゃがみこんで、三角にした布を鼻と口を覆うようにして布の端と端を頭の後ろで結んだ。
日本でいうマスクの代わりだ。
「よし!これで大丈夫かな。どう?」
「うーん……」
「…くるしい」
俺はマスクで慣れてるけど2人は経験がないからか、鼻と口を覆う布を手で触り居心地が悪そうだ。
でも、これを付けないで掃除をして舞った埃を吸い込んでしまうと、埃と一緒に体に害のある菌とかも吸い込んでしまって病気に繋がる可能性もある。特に2人はまだ幼くて免疫も大人と比べて未熟なはずだ。だから、2人には掃除が終わって家が綺麗になるまでは我慢して貰うしかない。
「病気にならないためだから苦しくても少しだけ我慢してね。魔法を使えばお掃除も早く終わるから」
「まほう!!!?」
ノワールが目をキラキラさせながら顔を見上げてきた。ルーチェも口には出さないけど、興味あります!というのが顔に出てる。
どうやら2人は魔法が気になるらしい。
一応リエゾンからレガメに来るまでの道中で、魔物が出て戦闘になった時は魔法を使っていたけど、2人は危ないから馬車の荷台にいるように言ってたから俺が実際に魔法を使っているのを見ていない。……いや、ちょっとしたやつは見たか?焚き火をするのに火魔法を少し使ったりしたからそれは見ているはずだ。でも、派手だったり規模が大きいような魔法は見ていない。
だからか、2人は魔法が気になるみたいだ。子供ながらの好奇心というのもあるだろう。
「魔法が気になる?」
「うん!」
「ん」
「そっか!じゃあ、実際にやってみるから見ててね。掃除だからそんなに派手なものじゃないけど…」
戦闘時のような派手な魔法ではないが、それでも2人は気になるみたいだ。目がキラキラしている。
そんな2人を見て微笑ましく思いながら、魔法を行使する。
まずは風魔法で床や家具などに溜まっている埃を浮かせて消し去ってから、水魔法で染み付いた汚れ等も含め全て洗い流す。そして、早く乾くようにまた風魔法を使えば終わりだ。
「こんな感じかな」
難しいことではないのであっという間に終わってしまった。埃や汚れが落ちた部屋内はさっきよりも雰囲気が明るく感じる。
試しにリビングと併設されたキッチンをやってみたけどいい感じにできた。
横にいた2人を見ると、ノワールは「すごぉい!」と言ってパチパチと手を叩き、ルーチェは目を少し見開き驚いている様子だった。
「きれい……」
「ん?…うん、そうだね。綺麗になったね」
「…ちがう」
「ん?」
「ゆづるのまほう、きれい」
ルーチェが呟いたので、部屋が綺麗になったという意味かと思ったが違った。どうやら、俺の使った魔法が綺麗と言いたかったらしい。
「そっか。ありがとう」
「………ぃぃな…」
小さな声だったけど、確かにルーチェが「いいな」と言ったのが聞こえた。
もしかして……
「ルーチェは魔法好き?」
「うん」
「ルーチェもやってみたい?」
そう尋ねると、ルーチェは顔を勢いよく俺の方に向けた。
「やりたい」
「…わかった。それじゃあ、今度魔法について教えてあげようか?」
「……いいの?」
「もちろん。ルーチェがやりたいなら俺が教えるよ」
ルーチェは少し間をあけた後、「まほう、やりたい」と答えた。
俺はルーチェと同じ視線の高さになって、「約束ね」と、ルーチェと右手の小指を絡ませた。
すると、ルーチェは目を細めてふわりと笑顔を浮かべた。
すごく嬉しそうだ。
そんな俺とルーチェを傍で黙って見ていたノワールが、「ぼくも!」と言ってきたので、今度3人で魔法の勉強をしようと約束をして、ノワールとも左手の小指を絡ませた。
小指を絡ませて3人で約束をした後は、家全体を同じように風と水の魔法で綺麗にした。
82
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【第1章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む
凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる