守明香織(呪ぱんの作者)

文字の大きさ
上 下
1 / 1

しおりを挟む


あら? そんな浮かない顔してどうしたの?

あなたは誰だって?
ひっどいわね~。アタシは、いつもアンタの側にいるのに。こんなに美しいお姉さんの存在に気づかないなんて、アンタ、目が腐っているわよ~。

ちょっと、アンタ今、お姉さんって言葉に首を傾げたわね? あはん♡ その首をちょんぎられたいの~?

目の前にいるのは、美しく素敵なお姉さん。はい、復唱!

よろしい!
というか、アタシのことを知らないなんて、悲しすぎるんですけど~。いじけちゃう~。

アンタって、本当にそういうところがあるわよね。

苦しいだけの幻想を追い求めて、目の前にある素敵なものには気づかず知らんぷり! 
そんなところで、スルー能力を発揮してんじゃないわよ! スルーするのは、全く興味ない時か、面倒くさい人間と物事だけにしなさい!

ちょっと、アタシを真っ先にスルーしようとしてんじゃないわよ!
アタシは、アンタになくてはならない存在なんだからね! 

それで? 何で、そんなに死にそうな顔をしているの?

生きるのが辛い?

アンタねえ、それは当たり前でしょ。
だって、アンタが生きることをそう捉えて、信じて、自分で辛い方を選んでいるんだもの。

甘い物を食べたいのに、わざわざ激辛専門料理店を選んで、キャロライナ・リーパー(世界一辛い唐辛子)を食べているんだもの。ちゃんとスイーツ店を選んで、甘い物を食べなさいよ!

辛い方を選んでないって、それ本当に言ってるの?
自分から、わざわざ不幸や苦労を選んでないって、ちゃんと断言できる?

ほお~ら、みなさい。目が泳いでいるわよ。

アタシから見たら、アンタは自分をいじめるのが大好きなドM中のドMよ!

そんな訳が無い、ねえ。

アンタが普段自分にしている事も、掛けている言葉も、相当酷いのに自覚がないの?
「まだ足りない」「自分は人より劣っている」「休んでいる暇はない」「だから自分はダメなんだ」

心と体が限界だと悲鳴を上げているのに無視して、自分をいじめ続けている。
まさに、自分への虐待! 拷問よ! 

それじゃあ、アタシといるのも苦痛でしょうね。

自分のせいじゃない? 周りの人間達や環境のせい?
確かに、その要素は勿論あるわね。アンタは生まれてくる場所を選べなかった。

親から望むような愛情を貰えず、心をたくさん傷つけられた。学校の先生や友人からも酷い扱いを受けた。何度も理不尽な目に遭った。

物語の主人公のように、誰かが救い出してくれるような感動的なシーンはなく、ただ耐えて泣き寝入りするしかなかった。


でも、アンタは今、大人になったでしょう?

住む場所を選べて、する仕事も、買いたいものも、食べたいものも、着たいものも。自分で好きに選ぶ自由がある。

自由に選べないですって?
ああ、そうね。アンタは絶賛変態監獄プレイ中のストイックドMだったわね。

だってそうでしょ?
「嫌われたくないから」「人に笑われるから」「自分に高い物を買うのは勿体無いから」「自分にはどうせ無理だから」「遊んでいる暇はないから」

はあ~。本当、クソつまんねーゴミカス緊縛思考!

あら、やっだ~♡
ドMセンサーが反応しちゃった? 残念だけど、アタシはドNだから、アンタが求めるドS言葉責めはしないわよ~。

昔、アンタを傷つけたのは、過去に出会った人間達の態度や言葉だけどね。
それを後生大事に握りしめて、今、自分を傷つけているのはアンタ自身よ。

捨てなさいよ。そんなクソの役にも立たない奴等の戯言なんて。

今のアンタは、側にいてくれる現在の恋人を無視して、昔DVしてきた恋人に執着してしがみついているような状態なのよ! 

いつまで、今を放置プレイする気なの!?

そんな変態を極める道に突き進むなんて、辛い時期を一生懸命に生きてくれた自分自身に失礼よ。

いきなりスパーンとドMの卒業が難しいなら、ソフトMを目指して見たらどうかしら?
制限がある中でも、出来る範囲で自分が選びたいものを選んで楽しむの。アンタ、人にはお金を使うのに、自分に対しては五百円使うのも惜しむでしょう? 優先順位を間違えすぎなのよ!

せっかく、生まれてきたんじゃない。
せっかく、ここまで生きてきたんじゃない。
それなのに、自分で自分を苦しめたら悲しいじゃない。

アタシだって、いつまでもアンタと一緒にいるわけじゃないのよ?
大事にしてくれないと、その心と体が限界になって、早めにお別れすることになっちゃうかもしれないんだからね! 
どんなに願っても、アタシとは復縁できないのよ!

いい? アンタが思っているよりずっと早く、アタシと別れる日は来るの。

アタシといられる時間は、遊園地に遊びにきたようなものよ。
限りある時間で遊ぶの。せっかくなら、少しでも楽しんだ方がお得だし、素敵じゃない?

勿論、アタシといる間はずっと笑っていろなんて暴言は吐かないわ。そんなの不気味だし、無理していると表情筋がパーンとご臨終よ。年中笑っているのは、おかめさんに任せておけばいいの。

アンタはもっと泣いてもいいし、拗ねて不機嫌になってもいい。怒ってもいいの。
だって、それがアンタの感情なんだから。
感情もアトラクションのように楽しめばいいのよ! ず~っと平坦なジェットコースターじゃ味気ないし、盛り上がれないでしょ?

ほら、そんな難しい顔をしないで。
アンタが難しく見ているだけで、生きるって、ずっとシンプルよ。

アタシも、まだ暫くはアンタの側にいてあげる。
だから、ただ楽しむことを、一緒に少しずつ試してみない?

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】夜に咲く花

すだもみぢ
現代文学
タワーマンションの最上階にある展望台。ショウコとアズサとレイはいつもそこで出会う。 お互いのことを深く訊いたりせず、暗闇の中で会うだけのそれが暗黙のルールだ。 だからお互いに知っていることはわずかなことだけ。 普通すぎるショウコに比べて、アズサとレイは神様から特別を与えられている存在だった。 アズサは優秀さで。レイは儚い美しさで。 しかし二人はショウコに言うのだ。「貴方はそのままでいて」と。 ショウコは夢を持つこともできずにいるのに。 自分はこのまま枯れるだけの存在だというのに、なぜ二人はそんなことを言うのだろうか。 そんなある日、レイが二人の側からいなくなった。 そして、ショウコも引っ越すことを親から告げられて……。 大人になる前の少女の気持ちを書いた作品です。 6/1 現代文学ジャンル1位ありがとうございました<(_ _)>

きみのオムレツはあいのあじ

有箱
現代文学
私たちにとって、オムレツは定番中の定番メニューだ。しかし特別なメニューでもある。 そんな我が家は片親家庭だ。 けれど、一人娘には寂しい思いをさせないよう、精一杯愛して育ててきた。 娘にとって十分であるかは、ちょっと不安だったりするけどね。 ……さてさて、今日も二人、ふわとろな幸せを頬張りましょう。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ショッピング

ふしきの
現代文学
冷徹な物語を心を込めて

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...