呪いの一族と一般人

呪ぱんの作者

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第七章 未来に繋がる呪いの話

番外編:欠片集め1

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*** 欠片1 お土産 ***


 十一月七日、結人間ゆいひとまの祭りが行われた夜。

 日和ひより達が宿泊するホテルに帰ると、ロビーやエレベーター前には多くの人がいた。
 ホテルの宿泊客のほとんどは、祭り目的で遠方からやってきた結人間家の人達らしく、花火後に帰る人が多かった為にタイミングが被ったようだ。

 混雑が緩和されるのを待っていると、じょうがロビーの隅にあった土産物売り場を指差した。

「ちょっと、嫁への土産を買ってくる」
 壮太郎そうたろうと日和も一緒に行くと告げ、碧真あおしも含めて全員で立ち寄る事になった。

 壮太郎と丈と離れ、日和は碧真と共に菓子コーナーを見て回る。

「どれ買おうかな? 栗の焼き菓子とか美味しそう。ああでも、変わり物の方が面白いかな?」
「自分用に買うのか?」
「それもだけど、職場と友達にね。自分じゃ遠出しないから、お土産を買うのに丁度いい機会だなって思って」

 日和の言葉に、碧真はピタリと固まった。

「友達なんていたのか?」
「いるよ! 何で驚いてんの!?」
「ああ、空想の話か。子供の発達過程で作り出されると聞いた事がある」
空想の遊び友達イマジナリーフレンドじゃなくて、リアルに二人いるから! てか、友達いないのは碧真君の方でしょ!?」
「いなくても不都合は無い」
「……うん。言い切られるとツッコミづらいわ」

「壮太郎さん!」
 聞き覚えのない女性の声が、壮太郎を呼んでいることに気づいて、日和は声の方へ顔を向ける。
 日和達から少し離れた雑貨売り場にいた壮太郎に、二十代半ばくらいの女性二人が笑みを浮かべて駆け寄っていた。

「碧真君! 碧真君! あれ見て!」
 日和は声を潜めながら、隣にいる碧真の袖を引っ張る。日和の視線に誘導され、碧真も女性達の方を見た。

 女性達が先程よりも声を落としている為、話の内容は聞き取れない。しかし、女性達のウットリした表情から、日和はピンと来た。

「あれは絶対にデートのお誘いだよ! しかも、二人から! 壮太郎さんモテるね!」
「聞こえないのに、何でわかるんだよ」
「見ればわかるよ! 私の恋愛センサーも間違いないって言ってる!」
「恋愛経験ゼロの癖に」
「経験ゼロでも、漫画やアニメで得た知識は豊富にあるからね! 髪長い人の色気凄い! 髪短い人も可愛すぎ! 美女二人から誘われたら、壮太郎さんもクラリときちゃうんじゃない!?」

 人の恋愛を見るのが大好きな日和は、興奮しながら見守る。碧真は呆れた顔をした。

「壮太郎さんのことを知っているのなら、あの女達も結人間の人間だろう? 結人間の女が、普通だとは思わない方がいい」

「え?」
 壮太郎からも、”結人間の女性達は怖い”と聞いた事はある。しかし、女性二人の表情は、どう見ても恋する乙女にしか見えなかった。

「碧真君はお子ちゃまだから、色恋の事がわからないんだろうね~」
 日和は大人ぶった笑みを浮かべる。偉そうな態度にイラッとしたのか、碧真は日和の下顎したあごを右手で乱暴に掴み上げた。

「男と同室で平然と眠りこけるお子ちゃま思考回路の奴に言われたくねえんだよ」
「待っで! こふぇ地味にいひゃい! 顎割れりゅ!!」

 日和が碧真の手を引き剥がすのに苦戦していると、丁度こちらに移動して来た丈と目が合う。二人を見て、丈は「またか」と呆れていた。

「二人共。仲が良いのは結構だが、公共の場ではやめろ。赤間さんが暴力を受けていると、周囲に誤解を与えかねない」 
「誤解じゃないれす。まごう事なき暴力を受けてまひゅ」
「碧真。手を離せ」
 丈に言われ、碧真は仕方なく手を離す。解放された日和は、すぐに丈の側へ避難した。

「今度は何で言い合いになったんだ?」
「”碧真君は色恋のわからないお子ちゃまだ”って言ったら、顎を掴まれました」
「日和の方がガキなのに、アホな事を言い出したんでイラッとしてやりました。反省はしません」
「そこは反省してよ!! 私の顎が割れたらどうするの!?」
「後悔もしない」
「人の顎を割るなら、流石に後悔して!?」

「三人共、何してるの?」

 いつの間にか、壮太郎も三人の側に来ていた。
 周囲を見回せば、女性達は土産物売り場から離れ、ロビーの窓側にあるソファに向かって移動していた。

「あれ!? 壮太郎さん、デートは!?」
「デート? 誰と?」
「さっき話してた美女二人ですよ! お誘いされたんじゃないんですか? まさか、二人とも断ったんですか!?」

 日和が驚きながら尋ねると、壮太郎は「ああ」と納得したように笑った。

「あの二人が僕に声を掛けてきたのは、解体したいからだよ」
「…………買いたい? 一緒に買い物?」
 言葉が飲み込めず、日和は首を傾げる。

「違うよ。バラす方の解体」
「……バラす?」

「あの二人は、僕と会う度に、”解体したいから作った呪具を譲ってくれ”と言ってくるんだ。この前会った時には、僕をバラして脳や細胞を調べてみたいって冗談混じりに言ってたな。目は笑っていなかったから、あれは本気だろうね。面倒だから、適当にあしらってきた」

 言葉を飲み込んで青ざめる日和を、碧真は鼻で笑う。

「恋愛センサーとか偉そうに言っていたが、とんだポンコツだな。色恋が何だって?」
「こ、これは流石に予想外だよ! 生きている人間を解体したいと思っている人がいるなんて思わないじゃん!!」
「だから、結人間の女は普通じゃないと言っただろう?」
 溜め息混じりの碧真の言葉に、壮太郎は同意して頷いた。

「恋愛だとしても、結人間の女性は真正面からデートに誘うなんて滅多にしないだろうね。獲物が自分から罠にかかるのを楽しむ人が多いみたいだし。一族の女性達の恋愛話を聞いた時は、僕でさえもトラウマになりかけたよ。聞きたいなら、話してあげようか?」

「ノン! いらんです!! 私は恋愛話は好きですが、ドロドロした心が痛くなる系は無理です!! ほのぼの系恋愛話を下さい!!」

「遠慮しないで。怪談と思えばいいから」
「壮太郎。人の恋愛を怪談扱いするな」

「丈君は、結人間の女性の怖さを知らないから言えるんだよ。しのは丈君に対して直球で好意を伝えていたし、よく見せようとしていたからね。ところで、丈君。篠へのお土産は買えたの?」

 丈は困ったように眉を下げ、首を横に振った。

「全部無かった。通常なら置いてある品も売り切れで、入荷は三日後だそうだ」

「篠へのお土産って、いつも買うやつでしょう? 店舗の方なら置いているんじゃない? 一番遠い店も、ここから車で二十分で行けるよね」

「どの店も営業時間が短い。明日は仕事の後始末があるから、間に合わないだろう。明後日も、朝早くに出て、鬼降魔きごうまの本家に戻らないといけないからな」
 
 残念そうな丈の顔を見て、壮太郎は思いついたようにニコリと笑った。

「そうだ。チビノスケとピヨ子ちゃんに、おつかいを頼むのはどう? 仕事の方は僕と丈君が行けば事足りるし、二人にお願いしてもいいと思うよ」

「は? 何を勝手に」
 碧真が迷惑そうな顔をする。丈も頷いた。

「今回は大変な目に遭ったから、二人にはゆっくり休んで欲しい。仕事が終わった後で間に合いそうなら、俺が自分で買いに行く」
「仮にギリギリで間に合ったとしても、売り切れている可能性が高いでしょ?」

「私は元気ですから、おつかいに行きますよ!」
 日和は笑顔で請け負う。妖特製青汁のおかげか、体調はすこぶる良い。それに、せっかく知らない場所に来たので、観光も出来ていいだろう。

「日和が一人で行ける訳が無いだろう」
「距離はあるみたいだけど、バスで行けば大丈夫でしょう?」
 日和の言葉を聞いて、壮太郎が携帯でバスの情報を調べる。

「バスは出てるけど、最寄りのバス停から二十分以上は歩かなくちゃいけないみたい」

「それなら大丈夫です! 問題なく歩けます」
「それならダメです。間違いなく遭難します」

 日和と碧真が同じタイミングで可否が異なることを言う。「何で?」と言いたげな顔をした日和に、碧真は呆れ顔で溜め息を吐いた。
 
「アホ。自分が方向音痴な事まで忘れたのかよ。全く知らない場所で、迷わないと言い切れるのか?」
「……だ、大丈夫。迷ったら、近くにいる人に聞くから。たぶん行けるよ」

 視線を泳がせながら曖昧に答える日和を見て、壮太郎は苦笑する。

「この辺りは山や林に囲まれているし、ピヨ子ちゃんなら本当に遭難しそうだよね」
「だ、大丈夫ですって! たぶん!」

 三人の表情が「いや、ダメだろう」と言いたげなものに変わった。

「迷った時には、俺に連絡してくれ。電話かメッセージで道案内をしよう」
 丈が助け舟を出すが、碧真は苦い顔で日和を見る。

「日和。北と東がどっちかわかるか?」
「え? 北は前でしょ? 東は……右だっけ? 左?」

 日和が首を傾げると、「これは無理だ」と以心伝心した三人は頷き合う。

「俺も行きます。日和に任せても、後で探しに行く羽目になるだけですから」
 碧真が仕方なく言うと、丈と壮太郎が安堵の笑みを浮かべた。

「助かる」
「本当に良かったよ。人の列も減ってきたし、そろそろ部屋に戻ろうか」
 明らかな態度の違いに、日和は一人落ち込む。
 
「……体内にコンパスなんて無いし、わかる訳がないよ。碧真君って、本当に意地が悪い」
「北を前とか言ってる時点でヤバいからな? つうか、太陽の傾き具合を見れば、方角なんて大体わかるだろう?」
「太陽見ても、”いい天気”とかしか思わないからわかんないよ」

 日和は碧真と横に並んで土産物売り場を出て、同時に別方向へ曲がる。
 左に曲がった日和の正面にあったのは、行き止まりの壁だった。

「やっぱり馬鹿だな」
 正しく右側へ曲がった碧真に、すかさずけなされる。日和は羞恥心で顔を真っ赤にしながら、碧真をキッと睨みつけた。

「碧真君も方向音痴になればいいのに!!」
「俺まで方向音痴になったら、困るのは日和だろう? ほら、さっさと行くぞ」

 碧真に手を引かれて日和は歩き出す。
 迷うのは確かに困るが、碧真と一緒に迷うのは案外面白そうだと、日和は少しだけ思った。

 


**** 欠片2 そして、トラウマが生まれる ****


 部屋に戻った日和は、碧真とソファに並んで座って息を吐いた。

「はー。お祭り楽しかったけど、ちょっと疲れたね」
「ああ、疲れた。考え無しのアホを探し回ったせいで無駄に疲れたな。あーあ」
「ごめんって、何度も謝ったじゃん!」

 確かに、祭りの時にはぐれたのは日和のせいだから言い訳は出来ないが、言われっぱなしなのもしゃくだ。

「碧真君って、お嫁さん出来たら、シンデレラの継母さんみたいにネチネチ虐めてそうだよね」
「あ゛?」
(ヒッ! 魔王降臨!!)

 シンデレラの継母なんて可愛い子犬だと思える程の凶悪顔で睨まれる。危険を察知した日和は素早くソファから立ち上がり、碧真から距離を取った。

「早くお風呂に入って寝ようかな! 寝る子は育つって言うし!」
「今更手遅れだろう。どんなに寝ても、その残念な頭は育たない」
「お黙り! このスッチョキョデュドッキョイ!!」
「お前が継母みたいになっているし、噛みまくっているせいで日本語もまともに言えない残念な頭の証明にしかなってないぞ」
「お黙ってくだしゃんせ!」
「キャラぶれ過ぎだろう」


 いつものように言い合いする二人の様子を、ベッドの下から覗き見ていた呪いの人形はニヤリと笑う。

(ムッツリ・ガッツリスケベに邪魔されて娘の胸を堪能出来ていなかったが、一緒に風呂に入れば生乳を味える! やはり、おっぱい神は、おっぱいを求める者に微笑むのだ!!)
 
 呪いの人形は素早く浴室へ移動し、シャンプーボトルの影に身を隠す。
 ワクワクしながら待っていると、浴室のドア越しに人が来た気配がした。呪いの人形は体を丸めて目を瞑り、気配を消してタイミングを待つ。
 浴室のドアが開き、シャワーレバーが回される。シャワーから出た水が床を叩いた瞬間、呪いの人形は物陰から一気に飛び出した。

『ふかふかの胸ーーーーー!!!』
 柔らかい胸に飛び込んだと思った呪いの人形は、違和感に気づく。

(硬い。それに、黒い服??)
 呪いの人形は顔を上げて固まる。

 呪いの人形がしがみついていたのは、碧真の腹部だった。

 碧真は入浴前に、シャワーで浴槽を濯いでから湯を張ろうと浴室にやって来ていた。
 呪いの人形が状況を飲み込むより早く、碧真に頭を鷲掴みにされる。

「何をしている? クソ人形」
 低い声で凄まれるが、呪いの人形の頭の中を占めていたのは柔らかい胸の事だけだった。

『何故だ!? Gカップおっぱいは何処に行った!?』
 碧真は額に青筋を立てると、呪いの人形の頭を更に強く締め付けた。

『のおお!! やめろ!! プリティダンディなスペシャルフェイスが崩れるだろう!?』

 呪いの人形の抗議を無視して、碧真は浴室から出て窓へ向かう。
 碧真は思い止まったようにきびすを返し、部屋のドアを開けて廊下に出た。

『何処へ連れて行く気だ!?』
「日和は大浴場にいる。途中まで連れて行ってやるよ」

(大浴場。つまり、生おっぱいいっぱい花畑!! 自分としたことが、素敵な楽園の存在に気づいていなかった!!)

 呪いの人形はキラキラと目を輝かせた後、碧真の行動に首を捻った。

『一体、どういうつもりだ? 貴様なら、あの娘から遠ざけようとする筈だろう? 罠か?』
「お前がうるさいから仕方なくだ。大人しくしておけば、少しはいい思いが出来るんじゃないか?」
 呪いの人形は疑っていたが、碧真が大浴場のある一階へ進んでいるのを見て警戒を解いた。

『お前、本当は良い人間だったんだな。礼と言っては何だが、一度だけ娘に触れる事を許そう。おっぱい以外でな』
 呪いの人形は感動して碧真を見上げる。碧真は冷めた顔をしていたが、ムッツリなので内心はウハウハだろうと、呪いの人形は訳知り顔で頷いた。

 ロビーまで辿り着くと、碧真は足を止めて周囲を見回す。
 早く大浴場に行けと伝えたいが、小さな子供達がこちらをジッと見ていたので黙っておくしかなかった。

 碧真は何か見つけたのか、足早に窓側のソファ席に向かって進む。
 近づいてきた碧真に気づき、ソファに並んで座っていた女性二人が顔を上げた。

「何か用? ナンパなら消えて」
「待って。この子、さっき壮太郎さんと一緒にいなかった?」
 ロングヘアの女性とショートヘアの女性の前に、碧真は呪いの人形を突き出した。

「これ、あんた達にやるよ」
「何これ? 人形?」
『ちょっと待て!! 大浴場は!? 楽園は!?』
 話が違うと、呪いの人形は慌てて声を上げる。

「この二人に、後で連れて行って貰えばいい」
 碧真は女湯へは行けないのだと気づき、呪いの人形は納得した。

『よし、娘達よ! 共に地上の楽園に行こうではないか!』
 呪いの人形はキラキラした表情と声で、女性二人に話しかける。

「え。今の声って、その人形? 自分で言葉を選んでいるように見えたけど……」
「それに、自分の意思で動いてる? 表情の変化も動作も、凄く細かい」

 結人間家の呪いの人形は、コンピュータのように決められた言葉しか喋らず、命じられた動作しかしない。

 壮太郎の呪いの人形は、自分の意思で言葉や声の抑揚を選び、自分の判断で行動を決定する。手足や表情の動きも人間のように滑らかで、多様性がある。
 瞬足や高い攻撃力を除いた基本性能の部分だけでも、女性達には十分に衝撃的だった。

「壮太郎さんが作った呪具だ。欲しかったんだろう?」
 碧真が声を落として言うと、二人はクワッと目を見開く。

 ロングヘアの女性が、碧真から呪いの人形を奪い取って抱きしめた。小さいがハリのある胸に包まれて、呪いの人形は幸せな気分になる。

「やった! やっと手に入れた!!」
「ねえ、早く部屋に戻ろう! ここにいたら、他の人に見つかっちゃう!」

 女性二人は急いでエレベーターへ向かった。

 呪いの人形は、女性二人が泊まっている部屋へ連れて行かれる。

 女性二人は、ソファに並んで腰を下ろした。
 ロングヘアの女性は、胸に張り付いたままの呪いの人形を手で引き剥がして上下にクルクルと回す。

「表面には、核の術式は無いわね」
「私にも見せて」
 
 ショートヘアの女性が、呪いの人形を取り上げる。胸にしがみつくと、こちらも小ぶりではあるが美乳だった。胸に夢中だった為、呪いの人形には女性二人の会話は聞こえていなかった。

「胴体に、少し硬い物がある」

 ショートヘアの女性が目配せをすると、ロングヘアの女性が鞄から分厚い木の板を取り出してテーブルの上に置いた。ショートヘアの女性がスカートを捲り上げ、太ももにあるホルダーからナイフを取り出す。

 胸から引き剥がされたと思った瞬間に、ダンッと鈍い音が室内に響き、呪いの人形の体が跳ねた。

『な、なななな!?』
 何が起きたかわからず、呪いの人形は混乱する。呪いの人形は、木の板の上に仰向けになった状態で、ナイフで頭を刺されていた。

「よし。じゃあバラすか」
「うん!」
『へ?』

 ロングヘアの女性が持つ小型ナイフが、呪いの人形に迫る。呪いの人形は、ようやく自分が置かれた状況を理解した。

『わああ! 待て!! やめろおおおおおお!!!』

 女性二人が愉悦の笑みを浮かべる中、呪いの人形の絶叫が響き渡った。


 その後、呪いの人形は命からがら女性達から逃げ出して、震える夜を過ごす。


 翌日の夕方。
 ホテルから離れた道路脇の木にしがみ付いていた呪いの人形は、仕事帰りの壮太郎に発見され、保護された。

『結人間の女性怖い。結人間の女性怖い。結人間の女性怖い』

 壮太郎の手によって昨夜の記憶を消してもらうまでの間、呪いの人形は結人間の女性達によって作られたトラウマに苛まれたのだった。
 
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