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扉が開いて侍女が現れた。
「お目覚めでございますね。よかったです。お体の方は大丈夫ですか?」
あわてて、ふたりは離れて体裁を整えた。
勇者は軽く伸びをすると、笑顔を浮かべた。
「ああ、大丈夫だ。世話になったみたいだな」
「いえ、当然のことをしたまでです。お気になさらず……。ここはアーカルホルト王国の城内でございます」
侍女は微笑みながら言った。
その時だった。
いきなり大きな足音が聞こえてきたかと思うと扉が開き、立派な顎ひげを生やした国王と、お妃が現れた。
もう二人とも60歳は優に超えているだろう。
彼らは勇者の顔を見ると、満面の笑みを浮かべて歩み寄ってきた。
「おお! 目覚めたか! 心配したぞ
!」
「まさかあなたたちが、破壊神を倒してくださるなんて……!」
二人とも喜びを隠しきれない様子だ。
「ありがとうございます! 本当になんとお礼を言っていいやら……」
「あなたはこの国の救世主です。どうか私たちの命の恩人として、いつまでもこの国にいてくださいまし!」
お妃は聖女と勇者の手を取り、目に涙を浮かべながら訴えかけた。
国王もその言葉に同意するようにうなずくと、勇者に向かって言った。
「我々はそなたのような英雄をずっと探していたんじゃよ。これまで何度も破壊神が率いる魔物の軍勢によって苦しめられて、愛する一人息子の王子も殺されたのだ。もうこの国も終わりかと思っておったが、そなたのような強い力を持った勇者が現れてくれたことが何よりも嬉しい。どうか好きなだけここにいておくれ」
「ありがとうございます……」
勇者は頭を下げた。
まさかこんなに歓迎されるとは思っていなかっただけに、喜びもひとしおだった。
「……エルドレッド、よかったわね」
彼女も、満面の笑みを浮かべて祝福してくれた。
☆☆☆☆☆
それから数か月後、傷が癒えると勇者と聖女は王国内を見て回った。
その国の文化や風習を知りたいと思ったのだ。
そこで分かったのはこの国がいかに豊かな国であるかということだった。
あちこち、魔物で荒らされた跡は残っていたものの、広大な農地では農作物が豊富に収穫され、街には多くの店が立ち並んでいた。
市場からは活気ある声が響き渡り、人々は皆笑顔を浮かべて暮らしている。
「お目覚めでございますね。よかったです。お体の方は大丈夫ですか?」
あわてて、ふたりは離れて体裁を整えた。
勇者は軽く伸びをすると、笑顔を浮かべた。
「ああ、大丈夫だ。世話になったみたいだな」
「いえ、当然のことをしたまでです。お気になさらず……。ここはアーカルホルト王国の城内でございます」
侍女は微笑みながら言った。
その時だった。
いきなり大きな足音が聞こえてきたかと思うと扉が開き、立派な顎ひげを生やした国王と、お妃が現れた。
もう二人とも60歳は優に超えているだろう。
彼らは勇者の顔を見ると、満面の笑みを浮かべて歩み寄ってきた。
「おお! 目覚めたか! 心配したぞ
!」
「まさかあなたたちが、破壊神を倒してくださるなんて……!」
二人とも喜びを隠しきれない様子だ。
「ありがとうございます! 本当になんとお礼を言っていいやら……」
「あなたはこの国の救世主です。どうか私たちの命の恩人として、いつまでもこの国にいてくださいまし!」
お妃は聖女と勇者の手を取り、目に涙を浮かべながら訴えかけた。
国王もその言葉に同意するようにうなずくと、勇者に向かって言った。
「我々はそなたのような英雄をずっと探していたんじゃよ。これまで何度も破壊神が率いる魔物の軍勢によって苦しめられて、愛する一人息子の王子も殺されたのだ。もうこの国も終わりかと思っておったが、そなたのような強い力を持った勇者が現れてくれたことが何よりも嬉しい。どうか好きなだけここにいておくれ」
「ありがとうございます……」
勇者は頭を下げた。
まさかこんなに歓迎されるとは思っていなかっただけに、喜びもひとしおだった。
「……エルドレッド、よかったわね」
彼女も、満面の笑みを浮かべて祝福してくれた。
☆☆☆☆☆
それから数か月後、傷が癒えると勇者と聖女は王国内を見て回った。
その国の文化や風習を知りたいと思ったのだ。
そこで分かったのはこの国がいかに豊かな国であるかということだった。
あちこち、魔物で荒らされた跡は残っていたものの、広大な農地では農作物が豊富に収穫され、街には多くの店が立ち並んでいた。
市場からは活気ある声が響き渡り、人々は皆笑顔を浮かべて暮らしている。
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