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「ええ……私の大切なひとからの贈り物なんです」

 セリーヌはそういうと、愛おしそうにそのロケットを握りしめた。

「王族の方? それとも宮廷でお仕えしているお方ですか?」

「いいえ、違います……」

「へぇ……そんな方からもらったんですね?  さぞやあなたを大切に想ってらしたんでしょう?」

 女性はそういうと、セリーヌのことをさらにじっと見つめた。

 まるで彼女の心のうちを探るかのように。

「ええ、そうね……」

 ふいに聖女は目を伏せると、とても寂しそうな顔をした。

 なんだか今にも泣き出してしまいそうなくらいに、切なげで儚げな表情をしている。

 セリーヌのそんな表情を見て、聖女を守るはずの勇者はなにも言えなくなってしまった。


☆☆☆☆☆


 その日の夜のことだった。

 すっかり日も暮れた頃、二人は宿屋に戻ってきた。

 部屋に入り、セリーヌが着替えている間、勇者はベッドに腰かけてぼーっとしていた。

 そして彼女のことを考えてしまう。


 今日のセリーヌはいつもと様子が違っていたように思う。

 どこか遠くを見ているような……まるで魂が抜けたような顔をしていた。

「エルドレッド?  どうしたの?」

 セリーヌに声をかけられて、はっとする。

 気が付けば彼女はすでに湯浴みを終えて着替えを済ませていた。

 手にはネックレスが握られている。

「い、いや……。きみは、王族の出身なのかって、思ったものですから」

「いいえ、違うわ。私はただの村娘よ」

「そ、そうなのですか……」

 だが……それにしたって、あのロケットには一体どんな価値があるのだろう?

  とても高価そうな宝石がふんだんにちりばめられていたように思うのだが。

「あの……今日のネックレスなんですが……」

 勇者がそういうと、聖女は微笑む。

 そしてそっと自分の首もとに手を当てて言った。

「そんな話より、次の魔物はもっと強いのをねらいましょうよ」

「え?」

「お金もたくさんほしいしね。そうしたら、もっとエルドレッドと旅ができるし」

「……ああ、そうですね。もっと大きな獲物をねらうのも悪くない……」

「なら、決定ね!」

 聖女はそう言って、いつものように屈託のない笑顔を浮かべたのだった。



☆☆☆☆☆☆




 それから3日後の朝のことである。


 冒険者ギルドで最強の魔物の情報を得たが、これまでの魔物よりもかなり大物であることがわかった。

 どうやら、その魔物は森の奥にある洞窟を棲家にしているらしい。

 そしてセリーヌはその魔物を倒したいと言った。
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