【完結】これは望んだ結婚じゃありませんでした! じゃじゃ馬侯爵令嬢の不思議な話

朝日みらい

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(最終回)

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 どれくらい泣いていただろう。

 セラフィーヌはスバルの顔を膝に置いていた。無意識にひたすらたてがみを撫ででいると、

「セラフィーヌ?」と、背後から声がした。

 セラフィーヌは心あらずのまま、アルベールなんか無視して、ひたすらスバルを見つめている。

「きみは、これだけスバルを大切に思っていたんだね」

 アルベールは、セラフィーヌの横に並んで座った。

「寄らないで……何様のつもりなの?」

 セラフィーヌは、隣のアルベールを横目で睨んだ。だが、彼の瞳の奥に、スバルの澄み切った瞳が重なった瞬間、

「まさか……」

 セラフィーヌは、馬の亡骸から立ち上がった。

 そして混乱して、自身の頭を抱えながら、後ずさりした。

「今朝の明け方の景色は、きれいだったね」

 アルベールの姿をしたスバルは、ゆっくりと立ち上がった。

「なぜ、どうしてスバルが?」

 スバルは、アルベールの眉を細めて言った。

「ぼくにも、分からない。でも、以前、愛馬に魂が乗り移ったように。今回は、君の夫の身体に乗り移ったようだ。君を助けたいと一心だったんだ」

 セラフィーヌは、ゆっくりとスバルに歩み寄り、彼の顔をのぞき込んだ。

 さらに彼の頬を両手で包み込んで、

「スバル……!ああ、スバル!」 

 はらはらと、セラフィーヌの頬を涙が溢れてこぼれ落ちていく。

「泣いてるよ」

 スバルは、ズボンからハンカチを差し出した。

 セラフィーヌは、そのハンカチを、彼の頬に押しつけながら、

「あなただって泣いてるわ」

と、頬笑んだ。

「これからは、だれにも君を泣かせない。義父母にも、誰にも手出しさせない」 

「……スバル!」

 彼は、セラフィーヌをぎゅっと抱き寄せた。
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