[完結]新米神官のお嬢様は、酔っ払い従者と怪物討伐です1【ゲリスヘーデスの呪い編】

第八章

第58話

　クレイは、切り取られた腕をかばいながら、後方に退くと、代わりに五本首のヒドラ獣二体が、剣士アルベルに襲いかかる。
　だが、クララの防御膜に阻まれて、攻撃は弾かれる。

｢新米、そのまま敵の前に行け｣
　アルベルの声で、クララは一体のヒドラ獣に杖を突き上げながら進む。

　敵がひるんだ隙に、アルベルが防御シールドから飛び出して、五本首を一気に切断した。

｢新米、杖を槍に変えて、留めをさせ｣
　クララは頷くと、シールドを解除して、杖先を槍に変えて、ヒドラ獣の心臓に突き立てた。

｢ふん。腑抜けども。手を煩わせやがる｣
　クレイは、不適な笑みを浮かべると、敵味方入り乱れる戦闘のさなかを、スタスタと、城の方角に向かって歩き始める。　

｢クレイを止めろ｣
　セリスは、クレイの目的が、城内のメディス一族の殺害であると気づいた。　

　イジスが弓を引き、クレイの頭部に矢が突き刺さったが、そのまま歩行を続けている。

　ロドリゴが棍棒でクレイの頭に振り下ろすと、片腕が棍棒をつかみ、ロドリゴごと、左右に振り回したあげく、前方の大木に激突させた。

｢ロドリゴ！｣

　イジスが、頭から血を流して倒れているロドリゴに駆けつけた。

　そして、すぐ横を歩き去ろうとするクレイの背中に、連続して矢を射抜いた。
　みるみる毒で、クレイの体が青白くなっていくが、依然、人形のように歩行をやめない。

｢こいつ、何者？｣
　イジスは、腰ベルトから短剣を握りしめ、クレイの首をはねようと、背後から飛びかかった。

　すると、突然、クレイの尻から長いムチのような尻尾が生えてきて、イジスを払いのけて地面にたたきつけた。

　セリスは、目の前の最後のヒドラ獣をロリーネと共に仕留めた後、クレイの前に立ちふさがった。

　それでも、クレイには、ふたりは眼中にないらしく、そのまま歩幅は変わらない。

　セリスは、クレイの手のひらに、十字の切り傷があることに気づいた。

｢あれは、転移魔法……！｣