[完結]新米神官のお嬢様は、酔っ払い従者と怪物討伐です1【ゲリスヘーデスの呪い編】

第五章

第37話

　ふたりは手をつなぎながら、しばし、湖の周りの散歩道を歩いた。

　爽やかな風が心地よく流れ、木立で小鳥たちが歌を口ずさむように、甘い声でさえずり合っている。

　しばらくしてお腹が減ると、ふたりは小さなテーブルを囲んで、仲睦まじく、サンドイッチやこんがり焼いたチキンやポテトを平らげた。そしてビスケットに温かい紅茶を飲みながら、おしゃべりをした。

　セリストは軍人になった経緯と、これまでの魔獣退治の武勇を話し出した。

　セリストの家庭は、父親が早世したことで家計が貧しく、下には妹が3人いたこともあり、十五で学校を卒業してから、皇国軍に入隊した。
　それから、家族に仕送りを続け、今は妹たちも立派に成人し、独立している。
　これまで、ドラゴン獣やヒドラ獣、大型のゴブリン獣など、様々な獣たちと戦ってきた。
　戦闘中に亡くなった友のことを思い出すのが辛くて、酒の量が多くなってしまったことも。

　クララも、ヘルメテンス家で過ごした幼い頃の話を話した。

　やんちゃ過ぎて、男の子とチャンバラ遊びや、馬を乗り回したりしてばかりいたこと。
　どうしても貞淑な令嬢としてのしきたりや作法になじめず、お淑やかな姉と比べられて辛かったこと。
　十才から学校で神学を学び始めてから、神に仕えて、平和をもたらす神官に憧れるようになったこと。
　神学の学習の一環で、教会での貧しい人たちの施しの活動に参加してから、さらに神学に熱中し、次第に家族と上手くいかなくなってきたことも。

　ふたりは、自然に打ち解けて、何もかも素直に話すことができた。　

　次第に陽が傾き始めていた。

｢ねえ、ボートに乗りません？｣

　クララが提案した。

　ふたりはボート乗り場で、小舟を借りてきた。

　セリストがオールを漕ぎ、クララは日傘をさしながら、うっとりしたように、セリストに向けて目を細めている。

｢セリスト様、わたしのこと、好きですか？｣