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第四章

第30話

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 皇国アルデーリアの皇帝が住む国王宮殿には、敷地規模では及ばない。

 それでも正面には三階建てのバルコニー付きの建物が、来賓者を両手で抱擁するように、僅かにU字に曲がっている。そのような建造物は、国内にはどこにも存在しない。

 その建物は、来客専門で、広間や食堂、ダンスやゲームなどを楽しむ社交場としても利用される。
 その建物の奥には家族が住む別邸があり、地下トンネルでつながっている。

 さらに、敷地内には、1キロも離れた高台の頂の湧き水をパイプで引き込んで、飲料としてでなく、噴水や庭園の池の水としても利用している。
 
 二人は門衛から身分の確認を受け、正面のエントランスに入った。

 踊り場には、たくさんの上質な背広姿の紳士や艶やかな原色のドレスを着た貴婦人たちで、熱気を帯びている。
 
 使用人のトレイから、ワイン入りのグラスを受け取ると、二人は石段を上がり、鏡の間といわれる、広々とした広間へと導かれた。

 ドーム型の高い天井の一面には、一流の絵師が描いた十二神の神々が描かれている。

 テーブルには肉や野菜、果物が溢れんばかりに皿に盛られている。
 
 高からに笑い、冗談を交わし合う人混みの中で、立派な顎髭をはやした老紳士と夫人が、二人を見つけてやってきた。
 その後ろを、金色のまばゆいドレスを着た女性もおいかけてくる。

「ありゃ、大変だ。ヘルテナンス公爵一家が、わざわざ、お出迎えだぞ!」

 同僚ロビルが、興奮して、体を硬直させた。

 しかし、ヘルテナンス公爵は、同僚ロビルへは眼中にないらしく、真っ先にセリストに握手した。

「セレスト殿、よく来られた。さあ、わが屋敷へ来てくれたまえ」
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