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第二章

第11話

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 その時、扉のノックがした。

 秘書官が、盆に二人分の朝食のプレートを持った秘書官のクレイが、穏やかな微笑を浮かべている。

「おはようございます。昨晩は夜遅くまで病気の孤児たちの介抱をしてくださったとか。お付き方から聞きましたよ」

 クララは、力なく、僅かに頬を緩めただけだった。

「ごめんなさい。わたし、食欲がないんです。それに、すぐにでも、子どもたちの所に行かないと……」

「クララさま、安心してくださいませ」

 クレイは、優しく微笑み、机に朝食を置きながら、こたえた。

「今朝明け方にテレス神官長が、子どもたちの元を訪れて、治癒してくださいました。子どもたちは見違えるほど元気です。先ほど、庁舎内の宿舎に保護しましたから」

「それは良かった……」

 クララは、安堵のため息をついた。そして、クレイに、「ありがとうございます」と、頭を下げた。

 クレイは、首を横に振った。

「わたしは何もしていませんよ。それより、まずはちゃんと栄養と休息が必要です」

「ええ、ですね」

「あと、あなたの付き人様ですが、ずいぶんとクララ様を心配して、かいがいしくお世話されていたのですよ。あなたは良い方がお供で羨ましいですね」

「そんな……」
 クララは、下着姿の自分を世話しているセリスを想像して、再び赤面した。
 
「食事を終えられたら、テレス神官長があなたにお会いしたいと言われています。1時間くらい後にまた伺いますね」

「はい。ありがとうございます」

 クレイが去ると、クララは銀杖をベッドの脇に置いてから、野菜と卵のオムレツを食べ始めた。

 そして、ぼんやりと窓から、すっきり晴れ渡った青空に浮かぶ綿雲を眺めた。

 しばらくして、扉が開いて、従者のセリスが入ってきた。

 クララが朝食を差し出すと、
「おう、朝飯、美味そうじゃないっすか」
と、セリスはベッドの端に座って、食べ始める。

「セリスさん、さっきはごめんなさい。怒ったりして。助けてくれたのに。ちゃんと、お礼を言いたくて。ありがとう」

 クララは、従者に向きなおると、頭を垂れた。

 従者は、口をモグモグさせながら、首を左右に振った。
 そして、目の前の、ショートの金髪に整った目鼻立ちの少女を、改めて見ながら言った。

「えっ、ああ、そんなのいいですよ。でも、なんでこんなに綺麗な体なのに、処女を貫く神官になんてなっちまったんだか。男にモテモテだったでしょうにねえ」

「や、やっぱりわたしの裸を見たんですね! 嫌らしい人っ。ありがとうを取り消します」

 クララはまたもや赤面して、秘書官が迎えに来るまでの間、一言もしゃべらなかった。
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