聖騎士は、悪と噂される魔術師と敵対しているのに、癒されているのはおかしい。

(1)

ヘルズ村は、暗い雲に覆われた荒涼とした土地で、不気味な森が広がっていた。

　その木々は枯れており、枝は曲がりくねっていて、風が吹くたびに不気味な音を立てていた。

　村の家々は傾いていて、窓は破れていた。

　住人たちは恐れを抱え、家々の中で灯りを灯していたが、それでも暗闇は村を覆っていた。

　ヘルズ村には、恐ろしい闇魔法を操る魔術師オルティスが住んでいた。

　彼の住む邪悪な塔は、村の外れにそびえ立っていた。
　
　人々は彼を恐れ、彼の存在を避けていた。

　村の中心には小さな教会があり、神父オズワルドが住んでいた。

　彼は陰鬱な雰囲気を纏い、村人たちに神聖な言葉を説いていたが、その目は何かを隠しているようだった。

　教会の扉は重く、錆びついており、開くたびに不気味な音が響いた。

　内部は暗く、蝙蝠が飛び交い、壁には古い聖書の絵が描かれている。

　祭壇の上には大きな十字架があり、その影が長く伸びていた。

　しかし、教会の雰囲気は異様で、神聖さを感じるどころか、むしろ恐怖を抱かせた。

　壁には血のような赤い模様が浮かび上がり、床には不気味な足跡が残っている。

　祭壇の上には黒い煙が立ち込め、その中から魔物が姿を現れそうだ。

　その村に、王都の大司教から聖剣の乙女アテナ・フォートネットが派遣された。

　少女の髪は黒く、長く、風になびいていた。灰色の鎧を身に着け、聖なる剣「エクリオン」を腰に差していた。

　彼女の目は決意に満ちており、闘志を秘めていた。

　アテナは貧しい男爵家の娘である。

　かつてアテナ・フォートネット男爵令嬢、セルドリアン公爵家のアーマンド卿の婚約者であった。

　彼女の髪は、黒く艶やかで、腰まで伸びていた。

　彼女の目は、深い青色である。

　かつてアテナはセルドリアン公爵家の令息アーマンドに愛されることを夢見ていたが、その夢は砕かれた。

　アーマンドは冷酷であり、彼女の身分を見下して、婚約を破棄したのだ。

　アテナは剣の腕を磨き、自分の力で生きていくことを決意した。

　彼女は誰にも頼らず、自分の信念に従って戦うことを選んだ。

（私は自分の人生を切り開くの）

とアテナは心に誓った。

　彼女の剣は、彼女の意志と覚悟を象徴していた。



　ヘルズ村の外れにあるオルティスの塔は、村人たちにとって恐怖の象徴だった。

　塔は古く、頂上には常に暗雲が立ち込めていた。

　神父からのお触れで、村人たちの間ではオルティスが闇魔法を使って魔人や魔獣を生み出しているという噂が絶えなかった。

　ある夜、村の中心で集会が開かれた。

　神父オズワルドが高らかに宣言した。

「また魔人で人が襲われた。我々の平和を脅かす魔物たちを討つ者はいないか！」

　村人たちは恐れていたが、そこに一人の少女の勇敢な声が響き渡った。

　それはアテナの声だった。

「大司教さまから派遣されました。私が討ちます。魔物に立ち向かい、村を守るのが私の使命ですから」