【完結】伯爵令嬢は愛する騎士の仲を引き裂く運命に逆らいます

朝日みらい

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 二日後に、ブルームとオカリナが身を寄せた公爵家に、一人の青年騎士が訪ねてきた。

 執事が二人の客室にやってきて来客を知らせると、ブルームはここに通すようにと伝えた。

「どうなさったの? もしかしてエドワーズ……」

 窓辺で読書をしていたオカリナは、突然の来客に引き攣った表情を浮かべた。

「大丈夫。俺たちの味方だよ」

 ドアがノックされて、ブルームが開けると、そこにはいつもの茶目っ気な笑みを浮かべたエリックが立っていた。

「エリック様!」

 オカリナは嬉しくて、エリックに駆け寄った。

「オカリナ様。ご無事でなによりです」と言って、彼女の手を握った。

 ブルームはエリックに、
「ありがとう、エリック。お疲れさま」と言って、握手した。

 エリックはブルームに、
「これをどうぞ」と言って、鎧の下から調書を取り出した。

 ブルームはエリックに、

「すまない……」と言った。

「これはエドワーズの、オカリナ様への暴行の証拠ですからね。記録係の書庫からこっそり拝してきたんですよ」と言って、これまでの経緯を説明した。

***

 エリックはオカリナの暴行の証拠を記録した調書を、自分の鎧の下に隠していた。

 調書をとったことがエドワーズに知られないように、注意深く振る舞っていたのだ。

 ブルームに調書を渡すことができるのは、国境を越えて隣国に入ったときだけだと思っていたからだった。

 エリックは単身馬に跨がり、国境へ向かった。途中で何度も調書が落ちていないか確認した。

 調書があることで安心したが、同時に不安も感じた。エドワーズや兵士たちに見つかったらどうなるかと恐れたのだ。

 エリックは国境の検問所に到着したときに、隣国の兵士たちが馬車や荷物や人々を検査しているのを見てヒヤヒヤした。

 調書が発見されたらどうしようか。

 エリックは自分の番が来るのを待って、冷静に振る舞おうとした。

 彼は兵士たちに
「こんにちは。私は騎士団の一員です。隣国への使節団の護衛です」
と言って、挨拶した。

 兵士たちはエリックに
「そうか。では、身分証明書を見せてくれ」
と言ってきた。

「もちろん」と言って、身分証明書を差し出した。

 兵士たちはエリックの身分証明書を確認して、

「大丈夫だ。通れ」と言って、許可した。

***

 エリックが調書をとってきた経緯を聞いて、オカリナもブルームも感謝で胸が熱くなった。

「エリック、本当に勇敢なやつだ。俺たちのために命がけのことをしてくれた」

と言って、感謝した。

「いや、別に。ぼくはただ、ブルーム隊長とオカリナ様が幸せになるのを見たかっただけですから」

と言って、首に手を回して照れ笑いをした。

「エリック様、あなたは本当に優しい方ね。私たちの救世主だわ」と言って、抱きしめた。

「オカリナ様、やめてくださいって。ブルーム隊長が嫉妬して、僕、殺されますよ」と笑い出した。
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