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ブルームはオカリナを見ると、嬉しそうに笑って抱きしめた。
「来てくれてありがとう。君に会いたかったんだ」
「私も会いたかったわ。でも、どうしてこんなところに?」
「実は今日は満月なんだ。君に見せたいものがあるんだ。こっちに来て」
ブルームはオカリナの手を取って、宿舎の中を歩き出した。オカリナはついて行った。ふたりは部屋や廊下を抜けて、屋上に出た。そこには小さな庭園があった。花や木や池があり、月明かりが美しく照らしていた。
「これが見せたかったものだ。この庭園は俺の秘密の場所なんだ。夜は誰も来ないし、ほとんど誰も知らない」
「すごいわ。こんな素敵な場所があったなんて!」
「君にぴったりだと思ったんだ。君は俺の中で一番美しい心がある人だ」
ブルームはオカリナに優しく微笑んだ。オカリナはドキドキした。ブルームはオカリナに近づいて、耳元でささやいた。
「君と踊りたいんだ。この月夜の晩に」
「でも、音楽がないわ」
「大丈夫だ。俺たちの心が音楽だ」
ブルームはオカリナを抱き寄せて、ゆっくりと回り始めた。オカリナはブルームの胸に頭を寄せた。ふたりは無言で踊った。月がふたりを見守っていた。
ブルームはオカリナと踊りながら、幸せな気持ちに浸っていた。オカリナはブルームの腕にしがみついて、甘い香りを漂わせていた。ブルームはオカリナの髪に顔を埋めて、彼女の温もりを感じた。
「ブルーム」
「ん?」
「私、ずっとあなたのことが好き」
「俺もだよ。君が好きだ」
ふたりは互いに目を見合わせて、微笑んだ。ブルームはオカリナにキスしようとした。そのとき、ふとした物音が聞こえた。ブルームは驚いて顔を上げた。そこには、宿舎にいるはずのエリックたちが立っていた。
「あっ」
「えっ」
「うわっ」
エリックたちは慌てて隠れようとしたが、もう遅かった。ブルームは彼らに気づいてしまった。ブルームはオカリナから離れて、ムッとした顔でエリックたちを睨んだ。
「君たち、何やっているんだ」
「すみません、ブルーム様!」
「ここは秘密の場所なんだ」
「わかってました、ブルーム様!」
「なんで覗き見してるんだ!」
「それはですね・・・。ブルーム隊長が街で気まずそうに女性服の店をうろうろしていたと、部下から聞きまして。きっとオカリナ様と近いうちに何かあるのかと……」
エリックたちは言葉に詰まった。彼らはブルームとオカリナの恋を応援していただけだった。彼らはふたりが幸せそうに踊っている姿を見て、感動していただけだった。でも、それを言えば余計に怒らせるだろうと思った。
「ごめんなさい、ブルーム隊長!」
「もう二度としません、隊長!」
「許してください!」
エリックたちは頭を下げて謝った。オカリナは笑い出した。
「ブルーム様、皆さんをお許しになって。エリック様、何か楽器などはあります?」
「へへへ、実は音楽室からギターやカスタネットなどを持参しました。きっと、ダンスなどなさりたいかと……」
エリックが頭をかいて、奥から持参した楽器を持って、ニヤニヤしている。
「なんだ、そうだったのね! でしたら、ブルーム様、皆さんに伴奏をお願いしましょう!」
ブルームは恥ずかしそうに苦笑した。部下たちの自分たちへの応援してくれ姿に嬉しくもあった。
伴奏がはじまり、ブルームはオカリナと手を携えて踊った。
「ブルーム様、ありがとう。愛しています」
オカリナは耳もとで囁いた。
「俺にだ。ずっと愛している」
二人が口づけをかわすと、
「おめでとうございます!」
と、エリックたちが一斉に拍手を送った。
***
しかし、その3日後だった。エドワーズが宿舎に現れたのだ。
エドワーズは騎士団の宿舎に到着して、ブルームの部屋に向かった。
彼は部屋のドアをノックして、中にいるオカリナに声をかけた。
「オカリナ、私だよ。エドワーズだよ。開けてくれないか。話があるんだ」
彼は優しく語りかけた。オカリナはドアの向こうからエドワーズの声を聞いて、恐怖に震えだした。
「来てくれてありがとう。君に会いたかったんだ」
「私も会いたかったわ。でも、どうしてこんなところに?」
「実は今日は満月なんだ。君に見せたいものがあるんだ。こっちに来て」
ブルームはオカリナの手を取って、宿舎の中を歩き出した。オカリナはついて行った。ふたりは部屋や廊下を抜けて、屋上に出た。そこには小さな庭園があった。花や木や池があり、月明かりが美しく照らしていた。
「これが見せたかったものだ。この庭園は俺の秘密の場所なんだ。夜は誰も来ないし、ほとんど誰も知らない」
「すごいわ。こんな素敵な場所があったなんて!」
「君にぴったりだと思ったんだ。君は俺の中で一番美しい心がある人だ」
ブルームはオカリナに優しく微笑んだ。オカリナはドキドキした。ブルームはオカリナに近づいて、耳元でささやいた。
「君と踊りたいんだ。この月夜の晩に」
「でも、音楽がないわ」
「大丈夫だ。俺たちの心が音楽だ」
ブルームはオカリナを抱き寄せて、ゆっくりと回り始めた。オカリナはブルームの胸に頭を寄せた。ふたりは無言で踊った。月がふたりを見守っていた。
ブルームはオカリナと踊りながら、幸せな気持ちに浸っていた。オカリナはブルームの腕にしがみついて、甘い香りを漂わせていた。ブルームはオカリナの髪に顔を埋めて、彼女の温もりを感じた。
「ブルーム」
「ん?」
「私、ずっとあなたのことが好き」
「俺もだよ。君が好きだ」
ふたりは互いに目を見合わせて、微笑んだ。ブルームはオカリナにキスしようとした。そのとき、ふとした物音が聞こえた。ブルームは驚いて顔を上げた。そこには、宿舎にいるはずのエリックたちが立っていた。
「あっ」
「えっ」
「うわっ」
エリックたちは慌てて隠れようとしたが、もう遅かった。ブルームは彼らに気づいてしまった。ブルームはオカリナから離れて、ムッとした顔でエリックたちを睨んだ。
「君たち、何やっているんだ」
「すみません、ブルーム様!」
「ここは秘密の場所なんだ」
「わかってました、ブルーム様!」
「なんで覗き見してるんだ!」
「それはですね・・・。ブルーム隊長が街で気まずそうに女性服の店をうろうろしていたと、部下から聞きまして。きっとオカリナ様と近いうちに何かあるのかと……」
エリックたちは言葉に詰まった。彼らはブルームとオカリナの恋を応援していただけだった。彼らはふたりが幸せそうに踊っている姿を見て、感動していただけだった。でも、それを言えば余計に怒らせるだろうと思った。
「ごめんなさい、ブルーム隊長!」
「もう二度としません、隊長!」
「許してください!」
エリックたちは頭を下げて謝った。オカリナは笑い出した。
「ブルーム様、皆さんをお許しになって。エリック様、何か楽器などはあります?」
「へへへ、実は音楽室からギターやカスタネットなどを持参しました。きっと、ダンスなどなさりたいかと……」
エリックが頭をかいて、奥から持参した楽器を持って、ニヤニヤしている。
「なんだ、そうだったのね! でしたら、ブルーム様、皆さんに伴奏をお願いしましょう!」
ブルームは恥ずかしそうに苦笑した。部下たちの自分たちへの応援してくれ姿に嬉しくもあった。
伴奏がはじまり、ブルームはオカリナと手を携えて踊った。
「ブルーム様、ありがとう。愛しています」
オカリナは耳もとで囁いた。
「俺にだ。ずっと愛している」
二人が口づけをかわすと、
「おめでとうございます!」
と、エリックたちが一斉に拍手を送った。
***
しかし、その3日後だった。エドワーズが宿舎に現れたのだ。
エドワーズは騎士団の宿舎に到着して、ブルームの部屋に向かった。
彼は部屋のドアをノックして、中にいるオカリナに声をかけた。
「オカリナ、私だよ。エドワーズだよ。開けてくれないか。話があるんだ」
彼は優しく語りかけた。オカリナはドアの向こうからエドワーズの声を聞いて、恐怖に震えだした。
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