【完結】伯爵令嬢は愛する騎士の仲を引き裂く運命に逆らいます

朝日みらい

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 しかし、オカリナの行為はすぐにエドワーズに知られてしまった。

 女中は届けるふりをして、その手紙をそのままエドワーズに渡したのだ。
 
 彼は手紙を読み、激怒してオカリナを激しく殴り続けた。

「無礼な女め。婚約者のくせに。裏切者!」

と彼は叫んだ。

「エドワーズ様、何度も言ったはずよ。私はあなたのものではない。自分の人生を生きたいと。あなたの言うことを聞く義務なんてないの……」

とオカリナは体のあちこちの痣を撫でながら、絞り出すように言った。

 エドワーズは襟首をつかんでオカリナを部屋から引きずり出し、自分の馬車に押しこんだ。すでに日は落ち、辺りは真っ暗だった。

「これから、楽しいグールの森に連れて行ってやる」

と彼は言った。

「あの森は危険だわ。グールに食べられる!」

とオカリナは震え上がった。

「お前は私の言うことを聞かないからだ。今のお前は俺にとって何の価値もないからな。少し頭を冷やすがいい。だが、情けはかけてやる。ナイフくらいは持っていけ」

と言って、彼女を馬車から引きずり下ろし、ナイフを地面に投げ捨てた。

 オカリナはエドワーズに懇願した。

「お願い、もうやめてください! ここに置いていかないで! あなたの言うことをぜんぶ聞きます! だから、お願いだからやめて!」

 エドワーズはオカリナに冷笑した。

「なら、ブルームのことを忘れることを誓うんだ。どうだ、2度と会わないと誓えば許してやる」

「それは……!」

「やっぱりそうだな。お前は自分のことしか考えていない。思い知るんだな、オカリナ」

 エドワーズは剣を投げ捨てると馬車に乗って、森から去っていく。

 オカリナは彼の後ろ姿を見て、泣き叫んだ。

「エドワーズ! エドワーズ! 私を置いていかないで! だれか私を助けてください!」

 オカリナは夜の森の中で一人ぼっちになった。

 彼女は暗闇や寒さや恐怖に震える。

「ウウううううううウ……」 

 彼女はグールの気配や声や足音を感じた。

 突然、森の中からグールが現れた。

 オカリナはグールたちに囲まれて、恐怖に震え出した。

 グールたちは人間の肉を食べることができるという血の欲に駆られて、オカリナに迫っていた。

 グールたちは人間とは思えない姿をしていた。彼らは皮膚が青白く、目が赤く、髪はぼさぼさとしていた。

 彼らの口からは血の匂いが漂っていた。

 グールたちはオカリナに牙と爪を見せて、威嚇してきた。

 オカリナは助けを求めて叫んだが、誰も来なかった。

 たちまち十数頭のグールが彼女を取り囲んだ。彼らは鋭い牙と爪をむき出しにして、彼女に迫る。

 オカリナは恐怖で震えながら、身を守るために持っていたナイフを握りしめた。

 グールはうなり声を上げながら、オカリナに襲いかかった。オカリナは驚いて、ナイフで応戦した。

 彼女はブルームから教えられた構えや切り方や受け方を思い出した。

 オカリナは必死になってナイフを振り回した。彼女はグールの肉体に傷をつけようとしたが、彼らはそれを気にせずに襲ってきた。

 グールの牙や爪から身を守ろうとしたが、避けきれなかった。

「くううっ!」

 彼女はグールの一匹に腕を噛まれて、血を流した。

 激痛に耐えながら、ナイフで一匹のグールの首を刺した。

 グールは叫び声をあげて倒れたが、他のグールたちはそれを見ても動じなかった。彼らはオカリナにさらに近づいて、彼女の肉体を食い尽くそうとした。

 オカリナは自分の命を覚悟した。彼女は涙を流しながら、最後に一つだけ願った。

「ブルーム! ブルーム! 助けてお願い!」


***


 その時、ブルームは森の中でオカリナの悲鳴を聞いた。偶然、騎士団の防衛任務で森に来ていたのだ。彼はすぐにその方向に走り出した。

 オカリナがグールに襲われていると思ったら、恐怖を感じた。

(グールは群れで行動する。今は一人しかいない。仲間を呼んでいる暇はない。死ぬかもな……。でも、それは俺の本望だ)

 オカリナを助けるために、自分の命を懸ける覚悟をした。

 彼は鞘から剣を抜き、グールの姿が見えるまで走り続けて、彼女を見つけた。

「オカリナ!」
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