【完結】伯爵令嬢は愛する騎士の仲を引き裂く運命に逆らいます

朝日みらい

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 ブルームは、オカリナに剣術の基本から応用までを厳しく教え込んだ。
 
 ある日、オカリナは剣術の稽古をしていた。ブルームはオカリナに対して容赦なく攻め立てた。

 必死に防御したが、ブルームの木製の剣はオカリナの腕に当たった。彼女の腕に赤い打撲の筋ができた。

「んんっ……」

 オカリナは痛みに小さく悲鳴を上げた。

 ブルームはすぐに剣を下ろした。オカリナの腕を見て、心配そうに言った。

「大丈夫か? 本当にすまなかった。もっと気をつけるべきだった」

 オカリナを抱き寄せて、優しく腕に薬草入りの軟膏で手当てをした。

 彼はオカリナの耳元で囁いた。

「すまない。痛かっただろう。でも、君は泣かずによく頑張った。素晴らしい剣士だ」

 翌週、オカリナに基本的な構えや切り方や受け方を教えた。しかし、オカリナは上手くできなかった。
 木刀を重く感じて、すぐに疲れてしまった。

 彼はオカリナに、

「もっと真剣にやらないと、いつまでたっても上達しない」と言った。

 彼女は自分の下手さに落ち込んで、涙をこらえた。

(また、ダンスと同じだ。わたしは無能なのね)

 ブルームはオカリナの様子に気づいて、優しく声をかけた。

「でも大丈夫だよ。まだ始めたばかりだから、焦らなくていいんだ。君は素直で努力家だから、きっと上手くなる」

 オカリナはブルームの言葉に感謝して、笑顔で頷いた。

 ブルームもまた、オカリナの健気な笑顔に心を打たれて、彼女の頭を撫でた。

 
 次第に、オカリナはブルームの優しさに心を開いていった。

 彼女は剣術の稽古を楽しみにするようになり、ブルームと話す時間が増えていった。

 彼女はブルームに自分の夢や希望を打ち明けた。自分の屋敷から出て、世界を見てみたいと言った。
 自分の好きなことをして、自分らしく生きたい、と。

 ブルームはオカリナの言葉に共感して、自分の過去や経験を語った。

 彼は、孤児院で育った男だった。幼い頃から、孤児院の運営費を稼ぐために、街で働いていた。
 貧しくて学校にも行けず、友達もいなかった。しかし、騎士に憧れて、本を読んで勉強した。

 ある日、王国の騎士団に入るための奨学金を得ることにした。
 本で学んだ知識や技術を使って、試験に合格した。
 騎士団で最も若くても最も優秀な騎士として、みんなから信頼されるようになった。

 彼は自分の夢や目標を話した。
 自分が王国の平和と正義を守ることや、弱者や貧しい人々を助けることや、世界中の魔物や悪者と戦うことを話した。

 オカリナはブルームの言葉に感動して、尊敬した。


***


 オカリナはある日、屋敷の庭で小さな鳥を見つけた。鳥は翼を傷つけて飛べなくなっていた。

 小鳥に同情して、手で優しく触れた。すると、オカリナの手の中で鳴き始めた。

 鳥を助けたいと思ったが、どうすればいいかわからなかった。

 そこへブルームがやってきた。オカリナが鳥を抱えているのを見て、驚いた。

 彼はオカリナに鳥を渡すように言った。

 オカリナは不安そうにブルームを見たが、彼に従った。

 ブルームは鳥を慎重に調べて、翼の傷を包帯で巻いた。

 彼はオカリナに、

「この鳥はもうすぐ治るだろう。しばらくここで世話をしてやろう」

と言った。

「ありがとう、ブルーム様」

 オカリナはブルームに感謝して、笑顔で頷いた。


 上達すると、ブルームはオカリナに剣術の実戦を教えた。

 森や山や川などの自然の中で戦う方法を教えた。
 オカリナは屋敷を飛び出して、違う世界で新しいことに興味を持って、楽しく学んだ。

 彼はオカリナに、

「君はすごいね。君はどんどん上達してるよ。君は素直で明るいから、何でもできる」

と言った。

 オカリナはブルームの言葉に嬉しくて、笑顔でありがとうと言った。

 ブルームもオカリナの笑顔に心を奪われて、手を握った。

(何かしら、この胸騒ぎ……)

 オカリナはブルームの笑顔を見るたびに、ドキドキするようになっていた。

 ブルームもオカリナに剣術を教えるうちに、彼女の素直さや明るさに惹かれていった。
 彼は彼女の笑顔や辛くても涙をこぼさずに前を向く姿に、守ってあげたいと思うようになっていた。

***

 剣術に自信を持ったオカリナは、ある日、屋敷からこっそり抜け出して、街へ行った。

 自由に歩き回りたかったのだ。

 色々な店や人や物に興味を持って、目を輝かせた。
 しかし、悪い盗賊たちに目をつけられて、追いかけられた。
 怖くなって逃げようとしたが、狭い路地に6人の男たちに追い詰められた。

 オカリナは、護衛用のナイフを取り出して、取り押さえようとした一人の男の腕に傷をつけた。

「よくもやりやがったな」
 
 背後にいた男が彼女の腕をねじ曲げて、ナイフを奪った。

「きゃっあ!」

 彼女は悲鳴を上げた。

 そこへブルームが現れた。
 オカリナが屋敷から抜け出したことを知って、心配して探していたのだ。

 彼はオカリナが危険に陥っているのを見て、怒った。剣を抜いて、男たちに立ち向かった。

 あっという間に男たちを一人残らず蹴散らして、オカリナを抱きかかえて、その場を逃れた。

 離れた茂みにオカリナを降ろすと、

「こんなところに来るんじゃない。この区域は危ないんだぞ」

 オカリナを叱りつつも、優しく抱きしめた。

「……ごめんね、ブルーム。もうしないわ」

 オカリナはブルームの首に手を回し肩を震わせていた。

 そしてお互いの目を見つめ合った。手を握りしめ、温もりを確かめ合っていた。
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