【完結】６人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

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「お兄様、何です？」

　エリーナは、立ち止まりました。

「愛人の子女って……？」

　彼女の声はとても小さくて弱々しいものでした。

　エドワードは、エリーナの動揺に気づきました。彼は笑みを浮かべ、彼女に言いました。

「知らなかったのか？　エリーナの母親は父上の愛人だったんだぜ？」

　エリーナはショックを受けてよろめきました。彼女はショックのあまり言葉が出ませんでした。

「売れない画家の卵のな。確か、アリシア・ヴァレンタイン。若くして死んだらしい」

　エドワードは続けました。

「だからお前は愛人の子女なんだよ！　それを母上には、僕がこっそり教えてもらっていたんだ」

　エリーナは泣き出しそうになりながらも我慢しました。それで、すべてが分かったのです。自分が他の兄姉よりも疎外されて育った理由が…。彼女がアリシア・ヴァレンタインの娘だったのも…。

「違うわ！　私は愛人の子じゃない！」

　エリーナが泣きながら叫びました。彼女は自分が愛されずに育った理由を信じたくなかったのです。

「私を育ててくれたのはお母様だけよ！」

　しかし、エドワードは首を横に振りました。

「馬鹿だな。お前の母親はアリシアだって教えてやっただろ」

　エリーナは呆然としました。彼女は母親を信じていましたが、それが真実だと知りたくなかったのです。

「お兄様、お願い……冗談はもうやめて……」

　エリーナは泣きながら懇願しました。

「エドワード、黙れ」

　ヴィクトールは厳しい口調で言いました。

「あなたがなぜアリシアの愛人の子供だという話をするのか、その説明をしろ」

　ヴィクトールはエリーナをかばいながら尋ねました。

　エドワードはため息をつきました。彼はエリーナを指差して言いました。

「それは……エリーナは父上に愛されてない。父上は仕方なくだし、母上は目障りなんだろ！」

　それを聞いた瞬間、エリーナは言葉を失いました。自分が両親から愛されていないことを受け入れたくはなかったのです。

「エリーナは落ちこぼれだ」

　エドワードは続けました。

「絵もろくに描けない、ダンスもダメ、勉強もできないしな！」

　彼は嘲笑しました。

「だからアリシアの愛人の子供なんだろ？　あの女は男を誘惑するのが上手だったらしいからな」

　エリーナは両手で頭を抱えながら座り込みました。彼女は泣き崩れて何も言えませんでした。

「だまれ、エドワード。エリーナには才能がある。それを伯爵や君たち兄姉たちが虐げてきたからだろう？　エリーナ、ここから出よう」


　ヴィクトールはエリーナを連れてその場を後にしました。彼は黙って馬車に乗せて、彼女の伯爵邸に送り届けました。