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ロミは、川のそばにある岩肌に腰を下ろした。
そして静かに赤く染まっていく空を見上げた。
すると少年は突然、「あっ」と吐息を漏らした。
今、ロミは限りなく大きな空が言葉では言い尽くせないやさしさで自分の体を包み込んでいたのに気づいたのだ。
青いパノラマに、穏やかな形の綿雲がゆっくり少年の目の前を流れていく。
日が沈むそのわずかな間だが、世界は誰のものではなく、ロミだけのものになっていた。
青空はそのままロミを抱いたまま、一日を終えようとしている。
大空は傷ついた少年に微笑みかけ、太陽が冷えた背中をそっと温め、小鳥たちは気さくに話しかけた。
小さな虫は擦り切れた、汗まみれの靴に乗って遊ぼうと誘い、風は頬を優しく撫で続けている。
(ぼくは一人ぼっちじゃない)
ロミは心の底で何度もつぶやいた。
そして、震える喉元からこみ上げる熱いものをぐっとがまんして、迷わずに立ち上がった。
両手を広げて、空を抱きしめる。これから家に帰ると、決めている。そして、父と仲良くパンを食べるんだ。
まだ少年の口は不器用にへの字に曲がっている。けれど、確かに青い瞳は笑っていた。
そして静かに赤く染まっていく空を見上げた。
すると少年は突然、「あっ」と吐息を漏らした。
今、ロミは限りなく大きな空が言葉では言い尽くせないやさしさで自分の体を包み込んでいたのに気づいたのだ。
青いパノラマに、穏やかな形の綿雲がゆっくり少年の目の前を流れていく。
日が沈むそのわずかな間だが、世界は誰のものではなく、ロミだけのものになっていた。
青空はそのままロミを抱いたまま、一日を終えようとしている。
大空は傷ついた少年に微笑みかけ、太陽が冷えた背中をそっと温め、小鳥たちは気さくに話しかけた。
小さな虫は擦り切れた、汗まみれの靴に乗って遊ぼうと誘い、風は頬を優しく撫で続けている。
(ぼくは一人ぼっちじゃない)
ロミは心の底で何度もつぶやいた。
そして、震える喉元からこみ上げる熱いものをぐっとがまんして、迷わずに立ち上がった。
両手を広げて、空を抱きしめる。これから家に帰ると、決めている。そして、父と仲良くパンを食べるんだ。
まだ少年の口は不器用にへの字に曲がっている。けれど、確かに青い瞳は笑っていた。
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