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3 計画

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 あれから五日後の学園の昼食が終え、エミエルは子爵の令嬢マリヤとアンや騎士団長のお嬢さんシュリの、取り巻き三人と離れた。
 『貴族組』の校舎から出て、併設されている『平民組』の校舎の裏口に入った。

 二階の教室にアンドレは席で読書をしていたが、エミエルがドアを軽く叩いたので、本を伏せて歩み寄る。

「エミエル、どうしたの?」

「いいから、ちょっと来て」

 半ば強引に、校舎裏の木立のある人気のない茂みの木のベンチに連れていく。

 えんじ色の制服の内ポケットから、

「クリストフ王子からの手紙への返事を書いてみたの! 想ったこと、全部ぶちこんだらせいせいした」

 確かに、恨み辛みが正直に書かれている。

「それは、まだ下書きだよね?」

「うん。でも、わたし、そのまま泣き寝入りするつもりはないから」

 座ったとたん、エミエルは、いつもの自信たっぷりの顔で、隣の青年に宣言する。

「うん。つまり、エミエルはクリストフ様と結婚したいってことだよね」

「ええ。もちろん。そうでなかったら、これまでの頑張りが無駄骨だもの」

「それで、ぼくにどうしてもらいたいんだい?」

「分からないわ。だから、そうだんしてるんだってば」

 アンドレは、眼鏡のフレームに軽く触れながら思案して、
 
「まずは、リリアナ男爵令嬢とクリストフ王子を引き離さないといけないだろうな」

「そうよ。でも、どうしたらいいの」

「ぼくとリリアナと結ばれるように仕向ければ」

「アンドレが、リリアナを誘惑? 冗談はよしてよね」
 
 思わずエミエルは笑い出したが、アンドレが真顔のままなので、

「ほんとにやっちゃう?」

「もちろんだ。リリアナは組は違うけど、『平民組』だからね。近づくことは容易だから。でも、約束してほしい」


「な、何よ?」


 エミエルは、急にアンドレが向き直って直視したので、ドギマギしながら、膝に両手をのせる。

 
「きみは絶対にクリストフ王子と結婚させるよ。だから、ちゃんとぼくの計画通りに行動してほしい。わかるね?」


「もちろん。アンドレの言うとおりにするわよ」


「分かった。それじゃ、手紙は書き直してもらうよ。それから、君の取り巻き連中も活躍してもらうからね?」

「うん。分かったわ。任せるわよ」 

 それから三日後、アンドレの書き直した手紙を、エミエルはそのまま、クリストフ王太子に送ったのだった。
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