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あたしは、つばを飲みこんでうなづいた。シノリはあたしの腕をつかんで、
「ほーら、さわってみてよ。どんな感じ?」
なんだろう、この感じ。しめっていて、やわらかくて、ふんわりしている。
「これ、ぜーんぶ、桜の花びらでできてるのよ。今の満開の時が、最高にキレイなんだあ」
うん、本当にキレイ。だけど、あたしは下を向いた。でも、すぐ散っちゃうんだよね。さびしく消えちゃうんだよね。
そんなあたしのうでを、シノリはつかんだ。
「ねえ、いっしょにボートに乗らない? 人間って、お金をはらえば乗れるんでしょ」
あたしは、かたをすくめた。お金なんか、持ってきてない。
「ねえ、親に出してもらえば? おねだりしたら、出してくれるって。ねえ、ねえ」
グイグイひっぱられて、あたしはしぶしぶ、ママと北原のおばさんのところにもどるはめになった。もちろん、華子もいた。おぎょうぎよく正座して、すまし顔で唐揚げを食べている。
「あーら、ずいぶんトイレ、長かったのねえ」
目の下が赤くなったママが、二本目の缶チューハイのフタをパチンと開けた。
「あのね、ボートに乗りたいんだけど」
「ほーら、さわってみてよ。どんな感じ?」
なんだろう、この感じ。しめっていて、やわらかくて、ふんわりしている。
「これ、ぜーんぶ、桜の花びらでできてるのよ。今の満開の時が、最高にキレイなんだあ」
うん、本当にキレイ。だけど、あたしは下を向いた。でも、すぐ散っちゃうんだよね。さびしく消えちゃうんだよね。
そんなあたしのうでを、シノリはつかんだ。
「ねえ、いっしょにボートに乗らない? 人間って、お金をはらえば乗れるんでしょ」
あたしは、かたをすくめた。お金なんか、持ってきてない。
「ねえ、親に出してもらえば? おねだりしたら、出してくれるって。ねえ、ねえ」
グイグイひっぱられて、あたしはしぶしぶ、ママと北原のおばさんのところにもどるはめになった。もちろん、華子もいた。おぎょうぎよく正座して、すまし顔で唐揚げを食べている。
「あーら、ずいぶんトイレ、長かったのねえ」
目の下が赤くなったママが、二本目の缶チューハイのフタをパチンと開けた。
「あのね、ボートに乗りたいんだけど」
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