春の風のシノリ

早稲 アカ

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 ソファにねそべって、スマホでゲームをしていたら、ママがあたしの肩をつついてきた。

「春菜、お昼、お花見行こっか」

 テレビの開花予報のニュースをやっていた。東京の桜が満開といって、キャスターのお姉さんがニコニコしている。

 だけど、あたしはしかめっ面して、知らんぷりして、ボタンをプチプチ押していた。

 せっかくの春休みだし、作文の宿題だって終わらせてある。のこり三日はダラダラ過ごしたいのに、何で外なんかに行かなきゃいけないの。

 休みが終わったら、今度は五年生になるし、クラス替えだってある。
 近所で、しかも大嫌いなクラスメートの北原華子といっしょにでもなったら、色々めんどうくさそうだ。

 今ぐらい、ゆっくりしたい。なのに、はあー、はあー、嫌だ嫌だ。

「はあーはあー、なに、おばさんみたいなため息ついてるの。さっさと着替えてきなさい」

 あたしは口をすぼめて

「何で。桜なんか見たくないよ」とぼそりとつぶやく。

 ママがポカンと口を開けたままだから、あたしは腕を組んだ。

「だから、桜ってさ、すぐ散っちゃうじゃん。だから、いやなの」
「ハハハ。何よ、それ。散らない方がおかしいじゃん?」

 ママは笑い始める。

 あたしはカチンときて、

「それに花粉がすごいんだよ。鼻ずるずるするの、イヤ」
「だったら、マスクつけていけば」

 ママはキッチンで唐揚げをパチパチあげ始めた。抵抗してもだめみたい。あたしはやっと立ち上がった。
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