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「おはようございます、お嬢様」
翌朝、メイド長のエリザベスが起こしに来た時には既に日が高く昇っていた。
「おはよう……」
アナリスは眠たい目を擦りながら身体を起こすと、窓の外を眺める。
辺り一面に広がる田園風景を見ると心が落ち着く。
(あっ……ラフィー様はどこかしら?)
きょきょろしていると、エリザベスは紅茶を淹れてくれた。
「ありがとう……あの、ラフィー様は?」
「殿下は早朝に出られました」
「そう……」
アナリスは落胆した。
せっかく二人きりなのに。
だが、それも仕方がないことかもしれない。
──何せ、昨日はいろいろなことがありすぎて疲れてしまったし、そのままぐっすり眠ってしまったのだから。
(でも……まだチャンスはあるわ)
アナリスは自分に言い聞かせると、着替えることにした。
エリザベスが手伝いを申し出てくれたが、丁寧に断りを入れた。
一人で着替えることができるし、彼女に手伝ってもらうのは申し訳ないと思ったのだ。
それから朝食を摂り、身支度を整えて、窓辺の椅子に腰掛けてぼんやりと窓の外を眺める。
──今日は雲一つない晴天である。
小鳥が楽しそうにさえずりあっている。
田園風景を眺める。
天気も良くて気持ちの良い朝だ──。
ふと、こちらに向かってくる馬車が見えてきた。
「こんにちは、お嬢様」
やがて馬車から降りてきたのは、アル・デイラーン公爵だった。
その隣にはクリストファーが立っていた。
「やあ、アナリス嬢……いや、第三王太子殿下のご婚約者メイリーン・アダムス様、こんにちは」
クリストファーは爽やかな笑みを浮かべると、こちらに歩み寄った。
そして、アナリスの手を取って口づけをする。
「おはようございます……」
アナリスは挨拶を返したが、彼の表情に微かな違和感を覚えた。
(あれ……? なんか、かしこまってない?)
だが、その違和感はすぐに消え去り、気のせいだと思うことにした。
「公爵様、わざわざお越しいただきありがとうございます」
アナリスは笑みを浮かべて礼を言うと、アル・デイラーン公爵に向かって一礼した。
翌朝、メイド長のエリザベスが起こしに来た時には既に日が高く昇っていた。
「おはよう……」
アナリスは眠たい目を擦りながら身体を起こすと、窓の外を眺める。
辺り一面に広がる田園風景を見ると心が落ち着く。
(あっ……ラフィー様はどこかしら?)
きょきょろしていると、エリザベスは紅茶を淹れてくれた。
「ありがとう……あの、ラフィー様は?」
「殿下は早朝に出られました」
「そう……」
アナリスは落胆した。
せっかく二人きりなのに。
だが、それも仕方がないことかもしれない。
──何せ、昨日はいろいろなことがありすぎて疲れてしまったし、そのままぐっすり眠ってしまったのだから。
(でも……まだチャンスはあるわ)
アナリスは自分に言い聞かせると、着替えることにした。
エリザベスが手伝いを申し出てくれたが、丁寧に断りを入れた。
一人で着替えることができるし、彼女に手伝ってもらうのは申し訳ないと思ったのだ。
それから朝食を摂り、身支度を整えて、窓辺の椅子に腰掛けてぼんやりと窓の外を眺める。
──今日は雲一つない晴天である。
小鳥が楽しそうにさえずりあっている。
田園風景を眺める。
天気も良くて気持ちの良い朝だ──。
ふと、こちらに向かってくる馬車が見えてきた。
「こんにちは、お嬢様」
やがて馬車から降りてきたのは、アル・デイラーン公爵だった。
その隣にはクリストファーが立っていた。
「やあ、アナリス嬢……いや、第三王太子殿下のご婚約者メイリーン・アダムス様、こんにちは」
クリストファーは爽やかな笑みを浮かべると、こちらに歩み寄った。
そして、アナリスの手を取って口づけをする。
「おはようございます……」
アナリスは挨拶を返したが、彼の表情に微かな違和感を覚えた。
(あれ……? なんか、かしこまってない?)
だが、その違和感はすぐに消え去り、気のせいだと思うことにした。
「公爵様、わざわざお越しいただきありがとうございます」
アナリスは笑みを浮かべて礼を言うと、アル・デイラーン公爵に向かって一礼した。
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