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 そのままデイラーン公爵家には戻らず、ラファエルは馬車で郊外の一等地にたたずむお城に連れてきてくれた。

 都から馬車で三十分程にもかかわらず、風景はのどかで自然豊かな屋敷である。

 外観は白亜の大理石でできており、色鮮やかな花々が咲き乱れている。

 美しい庭園には池があり、その中央には噴水もある。

 まるで絵に描いたような華麗なお屋敷だ。

「お帰りなさいませ殿下、そしてお嬢様」

 邸宅に入ると、年若い執事とメイドたちが出迎えてくれた。

 中も白を基調としており、小物に至るまで隅々まで清掃が行き届いている。

 二階のアナリスの部屋は、淡いピンクとクリーム色を基調としており、上品な家具と調度品でまとめられている。

「湯あみをされますか? それともお食事を先になされますか?」

 執事のローナンは穏やかに尋ねる。

 年齢は三十代半ばぐらいだろうか。

 理知的な面差しをした青年である。

「そうね……湯あみをお願いします」

 アナリスが答えると、ローナンはすぐに女中を呼んできて、階下の浴室に案内してくれた。

「どうぞ、ごゆっくりお寛ぎくださいませ」

 ローナンは恭しく一礼すると、部屋を出て行った。

 アナリスは、服を脱いで浴室に入る。

 温かい湯船につかると、ようやく一息ついたような気がした。

 しばらくして上がると、女中たちが新しい下着に着替えさせてくれる。

 そして、そのまま部屋に戻ったアナリスはベッドに倒れ伏した。

(ああ……なんか疲れたわ)

 アナリスは心の中で呟いた。

 昨日からいろいろなことがありすぎた。

「お嬢様、お食事の支度が整いましたよ」

 階下から女中の声が聞こえ、アナリスは身体を起こして階段を下りる。

 広い食堂に入ると、すでに料理が並べられていて、ラフィー様がラフな部屋着姿で、穏やかな笑みを浮かべて立っている。

「さあ、座って」

「ありがとうございます……ラフィー様」
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