【完結】作家の伯爵令嬢は婚約破棄をされたので、愛読者の第三王太子と偽装結婚して執筆活動に邁進します!

朝日みらい

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 そんなわけないだろうと思ったが、今さら断ることもできずに、そのまま連れて行かれてしまう。

 そしてあっという間に、王宮の地下にある宝玉が収められている部屋へとやってきた。

(うわー……!)

 アナリスは、思わず息を呑んでしまった。

 そこには、眩いばかりの宝玉がずらりとショーケースに並んでいる。

「すごいだろう?」

 ラファエルは、得意そうに言った。

 確かに美しい光景ではあるけれど、その美しさが逆に不気味でもある。

 なんとなく、背筋が寒くなるような気がした。

「さあ、好きなのを選んでいいよ」

 そう言って微笑むラファエルに、アナリスは戸惑いつつも、一番手前にある指輪を指さした。

 それはシンプルなデザインの、漆黒の指輪だった。

「これがいいのかい?」

 ラファエルはにこやかに尋ねてきたが、アナリスは小さく頷いた。

(だって……)

 なんとなく、呼ばれているような予感がしたからだ。

 この指輪を身につけなくてはいけない、そんな気がする。

「じゃあ、それをはめてみて」

 言われた通りに、右手の薬指にはめてみる。

 すると──。

(うっ……!)

 突然、激しい頭痛に襲われた。

 それと同時に、頭の中に何かの映像が流れ込んでくる──。

(えっ……嘘でしょ……?!)

 アナリスは、呆然としてしまった。

 今の映像が何だったのか、すぐに理解した。

 それは、王国全体を見渡していている。まるで、鳥になったような視界だ。

「どう?  気に入った?」

 ラファエルは、頬笑みながら尋ねた。

 しかし、アナリスはそれどころではない。

 今見た光景に、衝撃を受けていたからだ。

(これは……何……?)

「ドラゴンの雫だ」

 アナリスの疑問に答えるかのように、彼は言った。

「ドラゴンの…雫?」

(それは……どういう?)

 アナリスは、呆然としながらも聞き返した。

「そう。神様の化身と伝わる、漆黒のドラゴンから手に入れた、王家代々から伝わる指輪だよ。ドラゴンの涙の結晶で作られた、たいへん貴重なものなんだ」

(これが……?!)

 アナリスは思わず目を瞠った。

 だが、よくよく考えてみると、これほどまでに強大な魔力がありそうな宝玉であれば、それくらいの力を持っていてもおかしくないかもしれない。

「これを選んだ者は、王家にふさわしい人物だとされているんだ。むしろ、指輪が人を選ぶとってもいい」

(指輪が私を選んだの。そういうことだったのね……)
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