【完結】作家の伯爵令嬢は婚約破棄をされたので、愛読者の第三王太子と偽装結婚して執筆活動に邁進します!

朝日みらい

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 ラファエルが紹介すると、アナリスはスカートの裾をつまみ、お辞儀をした。

 アルは彼女の前に膝をつくと、

「私はデイラーン公爵家当主のアル・デイラーンと申します。以後お見知り置きを」

と丁寧に挨拶をしてくれた。

 そして立ち上がると、今度は握手を求めてきた。

「よろしくお願いいたしますね、アナリス嬢」

(わあっ……大きな手ね!)

 男性にあまり免疫のないアナリスは、内心ドキドキしながら、おずおずと握手に応じる。

「はい、こちらこそ……」

(でも、どうして初対面で、わたしの名前を知っているの……? もう、計画されてたのかしら)

 アナリスは疑問に思ったが、その答えを聞く前に、アルの方から話題を振ってきた。

「殿下がこうしてご婚約され、私はとても嬉しく思っておりますよ」

「そうですか……?」

「ええ。これで私も安心できます。我が国の王室で、ご婚約を拒まれていたのが、殿下だけでしたから」

 アルはそう言って微笑むと、ちらりとラファエルの方を見た。

 アナリスは気まずそうに、

「それはその……あのですね……」

とそれが偽装結婚であることをどうしようかと思案していると、代わりにラファエルが、

「アル、余計なことは言うな」

と釘をさすように言った。

「これは失礼いたしました」

 アルがおどけた調子で言うと、ラファエルはため息をついた。

 そしてアルは、アナリスに向かって声をかける。

「アナリス嬢、わかっております。あなたは『メイリーン嬢の花咲く夕べ』の作者様で、今回は取材のために偽装結婚をされるために参られたことも」

「あ……はい……」

(よかった……わかってくれてて)

「もう段取りはできています。名前は主人公のメイリーン・アダムス嬢ですよね。早速、公爵家としての身分を、仮発行させていただきます。ストーリーとしては、あなたはこの国の公爵家だが、孤児になり修道院におられたのを、わたしがお預かりしているということにいたしましょう」

 アルはアナリスに向かってそう言うと、続けて説明してくれた。

「本日はまず、わたしが教会に出向いて、手続きを済ませてきます。メイドに屋敷内をご案内させますから、ゆっくりとおくつろぎください」

「ありがとうごさいます……」
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