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馬車の中は緊張していたが、ラファエルが色々と話しかけてくれたおかげで、徐々にほぐれていった。
彼は隣国の歴史や文化について興味深い話をしてくれたので、アナリスもついつい聞き入ってしまった。
「我が国の海岸は本当に美しい。あなたが海を見たら、きっと気に入ってくれると思うよ」
「まあ! それは楽しみです……。でも殿下、これはあくまでも企画ですからね……?」
アナリスは心の中で旅行気分で浮かれているわけにはいかないと、気を引き締めようとする。
それでも、ラファエルは浮き浮きしたように言葉を続けた。
「それは残念だな。もしあなたが本当に妃になってくれたなら、すぐにでも新婚旅行に連れていくのに」
「ご冗談を……」
(いや、本当に冗談よね?)
アナリスは自分に言い聞かせるが、ラファエルの綺麗な顔を見ていると、つい期待してしまう。
彼は窓に映る自分を見つめながら続けた。
「2年前、私がこの国を訪れたとき、あなたの作品を初めて読んだんだ。それからというもの、ずっとメイリーンのことが忘れられなかった。そして今、憧れの作者様が目の前に座っている!」
「あの、殿下……?」
(いや……ちょっと!! この流れってまさか……)
アナリスは、嫌な予感に冷や汗が出るのを感じた。
ラファエルは、相変わらず熱っぽい眼差しでアナリスを見つめている。
彼はゆっくりと手を伸ばすと、アナリスの頬に手を当てた。
「本当に運命的な出会いだ」
「……」
(……まずいわ。このままじゃ、王太子妃になってしまう。そうなったら公務とか王妃としての重圧とか古臭いしきたりとか面倒くさいことで、もう、作家なんて続けれなくなっちゃうかも!)
アナリスはどうにか回避しようと必死に考えたが、何も思いつかない。すると突然、馬車が急停車して大きく揺れた。
「きゃあ! うわっ!」
アナリスはバランスを崩して、ラファエルの胸元に倒れ込んだ。
彼はアナリスを優しく抱き寄せると、心配そうに顔を覗き込んでくる。
(近い! 近いわー!!)
彼は隣国の歴史や文化について興味深い話をしてくれたので、アナリスもついつい聞き入ってしまった。
「我が国の海岸は本当に美しい。あなたが海を見たら、きっと気に入ってくれると思うよ」
「まあ! それは楽しみです……。でも殿下、これはあくまでも企画ですからね……?」
アナリスは心の中で旅行気分で浮かれているわけにはいかないと、気を引き締めようとする。
それでも、ラファエルは浮き浮きしたように言葉を続けた。
「それは残念だな。もしあなたが本当に妃になってくれたなら、すぐにでも新婚旅行に連れていくのに」
「ご冗談を……」
(いや、本当に冗談よね?)
アナリスは自分に言い聞かせるが、ラファエルの綺麗な顔を見ていると、つい期待してしまう。
彼は窓に映る自分を見つめながら続けた。
「2年前、私がこの国を訪れたとき、あなたの作品を初めて読んだんだ。それからというもの、ずっとメイリーンのことが忘れられなかった。そして今、憧れの作者様が目の前に座っている!」
「あの、殿下……?」
(いや……ちょっと!! この流れってまさか……)
アナリスは、嫌な予感に冷や汗が出るのを感じた。
ラファエルは、相変わらず熱っぽい眼差しでアナリスを見つめている。
彼はゆっくりと手を伸ばすと、アナリスの頬に手を当てた。
「本当に運命的な出会いだ」
「……」
(……まずいわ。このままじゃ、王太子妃になってしまう。そうなったら公務とか王妃としての重圧とか古臭いしきたりとか面倒くさいことで、もう、作家なんて続けれなくなっちゃうかも!)
アナリスはどうにか回避しようと必死に考えたが、何も思いつかない。すると突然、馬車が急停車して大きく揺れた。
「きゃあ! うわっ!」
アナリスはバランスを崩して、ラファエルの胸元に倒れ込んだ。
彼はアナリスを優しく抱き寄せると、心配そうに顔を覗き込んでくる。
(近い! 近いわー!!)
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