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 ラファエルは一瞬考えた後で、

「なるほど! それはいいアイデアですね! 早速準備に取り掛かろう」

と乗り気になっている。

 アナリスはとうとう、声を上げてしまった。

「社長! ちょ、ちょっとお待ちください! 冗談ですよね? まさか、わたしくが本当に王太子妃候補だなんて、そんな大それたことを本気でおっしゃっているわけではないですよね?」

「もちろんだとも」

 社長は笑顔で答えたが、その瞳は全く笑っていない。

 ラファエルは、アナリスに言い聞かせるようにゆっくりと話す。

「あなたは、すでに王妃にふさわしい女性だ。明日、いっしょに帰国するわたしと付いてきてくれませんか?」


******


(……信じらんない!)

 翌朝、アナリスは呆然としたまま、ラファエルに連れられて馬車に乗せられていた。

 あの打ち合わせの後、そのままラファエル正式に高齢の祖父母に会いに行き、

(それも護衛が20人もいる! しかも王家にふさわしい金ぴかの箱馬車で、その護衛が馬で囲んで並走していた!)

 アナリスを連れて祖父母と面会したのだ。

 ラファエルは大まじめで祖父母に対して、

「アナリス嬢を、わが国の王宮で、半年の間、お抱えの宮廷作家として迎えたい」

などと話した。

 それに祖母は大喜びし、祖父は何度も感謝の弁を述べたのだった。

 そんなわけで、アナリスはラファエルと隣国に向けて出発していった。
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