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(どうして……?)
メイリーンは、呆然としていた。
目の前の光景を、信じることができなかった。
金色に輝く柔らかそうな髪に、吸い込まれそうなほど深く青い瞳が見える。
社長の応接室に、なんと6人の屈強な衛兵たちに守られながら、社長とラファエル王太子がソファで楽しそうに談笑していたのだ!
「おお、アナリス嬢、ようこそ」
社長は立ち上がると、満面の笑みで迎えてくれた。
(ひー!)
アナリスは思わず声を上げそうになるが、必死にこらえて挨拶をする。
「こんにちは……お忙しいところすみません」
「いやいや、ちょうどお茶の時間でしてね。ちょうど、殿下とあなたの話題をしていたところです」
社長は、アナリスの手をしっかりと握ると握手をした。
その仕草は、とても親しげだ。
ラファエルも低調にお辞儀をすると、アナリスのシルクの手袋から口づけを落とす。
「会えて嬉しいよ、アナリス嬢。君に会えるなんて今日はついてる」
「あ……ありがとうございます」
(ひぃぃぃぃっ!)
アナリスは心の中で悲鳴を上げながら、必死で平静を装った。
偶然だろうけど、まさか王太子がこんなところまできていたとは、思いもしなかったからだ。
クリストファーが咳払いをすると、社長の方に視線を向ける。
「それで、アナリス嬢が連載している『メイリーン嬢の花咲く夕べ』の展開ですがね──」
クリストファーが打ち合わせの内容を話すと、社長は納得したように頷いた。
「それは面白い! ちょうど隣国の王太子殿下もおられることだし。どうでしょう? ドッキリ企画で、殿下の王太子妃としてアナリス嬢をご紹介してみては?」
「ドッキリ……ですか?」
クリストファーが社長に聞き返す。
「ああ、そうだ! 今どきの王太子妃として、ふさわしい女性とは、どんな人物なのか? 読者はきっと興味を持っているはずだ。しかも、実際に作者が体験してみた方が、読者も引き付けられると思う。殿下、いかがでしょうか? アナリス嬢をためしに、王太子妃候補としてお連れになるというのは?」
(な、なんですって!?)
アナリスは思わず叫びそうになるが、ぐっと堪える。
(まさか、殿下がこんなバカげた企画に乗るはずない……)
メイリーンは、呆然としていた。
目の前の光景を、信じることができなかった。
金色に輝く柔らかそうな髪に、吸い込まれそうなほど深く青い瞳が見える。
社長の応接室に、なんと6人の屈強な衛兵たちに守られながら、社長とラファエル王太子がソファで楽しそうに談笑していたのだ!
「おお、アナリス嬢、ようこそ」
社長は立ち上がると、満面の笑みで迎えてくれた。
(ひー!)
アナリスは思わず声を上げそうになるが、必死にこらえて挨拶をする。
「こんにちは……お忙しいところすみません」
「いやいや、ちょうどお茶の時間でしてね。ちょうど、殿下とあなたの話題をしていたところです」
社長は、アナリスの手をしっかりと握ると握手をした。
その仕草は、とても親しげだ。
ラファエルも低調にお辞儀をすると、アナリスのシルクの手袋から口づけを落とす。
「会えて嬉しいよ、アナリス嬢。君に会えるなんて今日はついてる」
「あ……ありがとうございます」
(ひぃぃぃぃっ!)
アナリスは心の中で悲鳴を上げながら、必死で平静を装った。
偶然だろうけど、まさか王太子がこんなところまできていたとは、思いもしなかったからだ。
クリストファーが咳払いをすると、社長の方に視線を向ける。
「それで、アナリス嬢が連載している『メイリーン嬢の花咲く夕べ』の展開ですがね──」
クリストファーが打ち合わせの内容を話すと、社長は納得したように頷いた。
「それは面白い! ちょうど隣国の王太子殿下もおられることだし。どうでしょう? ドッキリ企画で、殿下の王太子妃としてアナリス嬢をご紹介してみては?」
「ドッキリ……ですか?」
クリストファーが社長に聞き返す。
「ああ、そうだ! 今どきの王太子妃として、ふさわしい女性とは、どんな人物なのか? 読者はきっと興味を持っているはずだ。しかも、実際に作者が体験してみた方が、読者も引き付けられると思う。殿下、いかがでしょうか? アナリス嬢をためしに、王太子妃候補としてお連れになるというのは?」
(な、なんですって!?)
アナリスは思わず叫びそうになるが、ぐっと堪える。
(まさか、殿下がこんなバカげた企画に乗るはずない……)
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