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「は…?」

 アナリスはそんな二人のやり取りをぽかんと見つめていたが、はっと我に返ると慌てて二人の間に割って入った。

「一体、何のお話ですの? わたし、婚約者なのだけれど…」

 アランの返答を待つことはできなかった。アナリスは思わず、そう言っていた。

 しかし、突然そんなことを言いだしたアナリスを不思議に思ったのか。アランが口を開こうとしたのだが、先に声をかけたのはソフィアだった。

「あなたとの婚約は白紙にすると、アランが決めたのよ。ふふ、アランはね、私との未来を選んだの!」

 ソフィアはそう言うと、アランの腕に手を絡ませた。

 アナリスは思わずその行動にぎょっとする。

「それは……一体どういうことですの?」

「実はね、家の公爵家に借金があって、ソフィアと結婚すればハント商会からの借金は帳消しになるんだ」

 アランは、照れくさそうに笑った。そして、そのまま続ける。

「実は、僕とソフィア嬢は恋人同士なんだ」

「え…!」


☆☆☆


(最近、アランと会うことが減っていたのはこれだったんだ)

 そんな予感をひしひしと感じながら、アナリスは舞踏会の会場で呆然と立ち尽くしていた。

「ほら、もう行きましょうよ! ダンスが始まっちゃう!」

 ソフィアは嬉しそうに目を輝かせると、アランの腕から離れ、駆け寄ってきた。

「 私、今晩から正式にアラン様の婚約者デビューだわ」

 ソフィアは甘えた声を出すと、そのままアランに抱きつこうとした。

「ち、ちょっと!?」

 アナリスは、とっさに二人に割って入ろうとして手を伸ばした。

「ま、待ってください!  勝手に婚約破棄なんて……それはおかしいわ!」

 ソフィアの手を払いのけようとしたが、彼女には触れなかった。

 けれど、ソフィアはわざと、よろよろとバランスを崩したふりをして、勝手に前屈みに倒れたのだ。

「きゃあ! アナリス様やめてぇ!」

「ソフィアっ!」

 アランは慌てて彼女を助け起こそうとしたが、ソフィアは臥せったまま動かない。
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