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わたしは悲しくなって黙り込んでしまった。

すると、お兄様がわたしの顔に手を添えて上を向かせると、再び口づけをした。

今度は先程よりも長くて激しいものだった。

(わかったるわ。ここにいたら、同じ家にいれば、私たちは兄妹のままでしかない。お兄様の考えは間違っていないわ……!)

そんな考えとは裏腹に、わたしの心の中では、お兄様と一緒にいたいという思いがどんどん膨らんでいく。

それは、お兄様も同じだった。お兄様はわたしに再びキスをした。


◇◇◇


お兄様は学園を卒業して、辺境の地へ旅立っていった。

それからの二年間は、わたしにとってはとても辛く苦しい日々だった。

お兄様は月に一度は手紙をくれたけれども、寂しさは募るばかりであった。

(でも、私はもう決めたのよ……。お互いにそれぞれの生き方を見つける時かもしれない……)

そんな私の心をなぐさめてくれたのは、親友のマリエッタだった。

彼女はわたしに寄り添い、慰めてくれた。

わたしはそんな親友の存在に救われて、なんとか前に進むことができたのだった。

そして、お兄様がラクサローム辺境伯を継いでから2年ほど経った頃、わたしも学園を卒業する日が迫ってきていた。

この学園での生活も終わりを迎えるのだ。

卒業の日が近づくにつれ、わたしは将来のことを真剣に考えるようになった。

(このままで本当にいいのかしら……?)

クラスメートたちが次々と婚約や結婚を決める中、わたしは誰ともこうした貴族の令息たちとの恋物語のような展開になることはなかった。

もちろん、学園生活は十分に楽しめたと思っているが、果たしてそれだけで満足していいのだろうか? 

わたしはもっと自分の人生を充実させるためにも何か目標を見つけたいと思っていたはずだったのに。

(ああ……)

わたしはぼんやりとした頭で考えながら、急に夜中に屋敷を抜け出して、あの小さな泉のほとりに出た。

周りが木々で囲まれていて、まるで別世界のように感じられる『秘密の場所』へと赴いたのだ。

(お兄様……)

わたしは切なくなって、思わず涙をこぼす。

すると後ろから声が聞こえた気がした。

「泣いているのかい、クラリス?」

「え……?」

わたしが驚いて振り返ると、そこには一人の男性が立っているのが見えた。

その男性を見て、わたしは衝撃を受けたのだった。

(お兄様……?)
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