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わたしは毅然とした態度で言う。

アルフォード王太子殿下は少し悲しげな表情になったが、すぐに笑顔に戻った。

「そうか……、クレア、こちらに来てくれ」

アルフォード王太子殿下はクレアを手招きした。

彼女は静かに立ち上がると、殿下のもとへと歩み寄る。

そして、二人は見つめ合うと頷き合ったのだ。

(一体何をするつもりなの……?)

わたしは不安になって見守っていたが──

「クラリス嬢に伝えたいことがある」

アルフォード王太子殿下はそう言ってわたしの方を見た。

それからクレアの肩に手を置くと、彼女を引き寄せてこう言ったのだ。

「先ほどのクレア・ラックスフォード公爵令嬢との婚約については、そのまま継続とする。どうも、わたしの誤解があったようだ……。許してくれ、クレア」

「……ありがとうございます、アルフォード様」

クレアはそう言って頭を下げる。

その様子を見て、会場中が歓声に包まれた。

「もう一度、ダンスをしようか」

「……はい」

アルフォード王太子殿下はクレアをリードすると、再びダンスを始めた。

先程の完璧なダンスとは打って変わって、どこかぎこちない感じがするが──それでも二人は楽しそうに踊っていた。

(すごいわ……)

わたしはその様子に見惚れてしまった。

「クラリス、私と踊っていただけませんか?」

突然声をかけられて振り向くと、そこにはルドルフが立っていた。

彼の笑顔に胸が高鳴るのを感じたが──

(だめよ、わたくし……兄妹なのに)

わたしは一瞬ためらったものの、お兄様の笑顔に心が揺れるのを感じていた。

「ええ、喜んで」

わたしはそう言うと、お兄様の手を取った。

そのまま二人で中央へと向かうと、音楽に合わせて踊り始めた。

すると、先ほどのアルフォード王太子殿下とクレアのダンスを見て盛り上がった会場がさらにヒートアップしていくのが分かった。

(なんだか照れるな……)

お兄様はわたしをリードしながら、優雅にステップを踏んでいく。

その動きはとても滑らかで、まるで本物の王子様のようだった。

(……素敵)

わたしは思わずうっとりしてしまった。

しばらく踊ったところで、お兄様が私の口元で囁いた。

「クラリス、愛してる」

「……うれしい」

わたしは笑ってみせたのだった。


◇◇◇◇◇◇
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