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「クレア嬢が殿下の婚約をつなぎとめるよう、がんばると。そう仰ったんだね?」

「ええ……」

わたしは小さくうなずいた。

しかし、彼はすぐに穏やかな笑顔に戻ると、わたしに語り掛けた。

「実はね、私もクレア様にお願いしたんだ」

「えっ……?」

(それってどういうこと?)

わたしは驚いて顔を上げた。

お兄様は優しく微笑んでいたけれど、どこか寂しげな表情だった。

「来年にぼくが卒業したら、他の貴族の跡取りとして推挙してもらえないかとね」

「なんで、お兄様……」

(どうして……?)

「ねえ、わたしたちのレインベル家を離れるというの? お兄様は本当にそれでいいの?」

「それが一番の方法だよ」

彼はすぐに首を振ると、寂しげに微笑んだ。

「ラックスフォード公爵家の権力があれば、どこか侯爵家の跡取りがいない養子先などを見つけるのはたやすいはずだ。そうすれば、わが男爵家の未来も明るくなる」

「そんな……」

わたしは二の句が継げなかった。

(お兄様のいないレインベル家なんて考えられない……)

言葉を失っているわたしを見て、お兄様は悲しげに笑った。

「大丈夫。クラリスはもっと自由になれるんだ」

「わかったわ!だから、もうやめて!」

わたしは叫んだ。

これ以上聞いていたくなかったからだ。

(どうして、こんなことになっちゃったんだろう……?)

「わたし、お兄様と片時も離れたくない。だから、クレア様ががんばって、殿下の婚約を続けてくだされば、わたしたちはそのままずっと兄妹として暮らしていけるのよ。愛しているの!」

わたしはお兄様の胸に顔を押し付けた。

「クラリス……」

彼はそっとわたしの髪を撫でた。

(わたし、今、幸せなんだわ……)

わたしはそう実感していた。

ずっと好きだった兄と結ばれて幸せだ。

なのに、どうしてこんなに胸が苦しいのだろう?

「もっと……もっと優しくして……もっと奪ってちょうだい」

わたしは無意識のうちに口にしていた。

その言葉を聞いた瞬間、ルドルフの表情が変わったような気がしたが、今はそんなことなどどうでもよかった。

ただ目の前の相手を求めることだけしか考えられなかったのだ。

「もちろん」

ルドルフはそう答えると、唇を重ね合わせてくる。

舌と唾液が絡み合う感覚がたまらない。

「ん……ちゅぷ……れろ……」
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