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◇◇◇
それからほどなくして、談話室で親友のマリエッタとおしゃべりをしていると、アルフォード殿下が顔を出した。
「ちょっと、話せるかな?」
「は、はい!」
殿下は私を中庭まで連れて行った。
「再来週に、王宮で盛大な夜会を開くことになっているんだが。ぜひ、君にも来てほしいんだ」
「え……?わたしが……ですか?」
アルフォード殿下は、力強くうなずくと、わたしの手を取った。
「君には婚約者もいないし、僕の正式な婚約者として社交界デビューして貰いたいと思っているんだ。お願いできるかな?」
「そ、そんな……クレア様がいらっしゃるのに困ります!」
わたしは思わず後ずさりしてしまったが、殿下は逃すまいとわたしに抱きついてきた。
(うわぁっ!?)
わたしは慌てて周囲を見回したが、幸いにも人影はなかった。
でも、誰かに見られたら大変だと思い、わたしは殿下を引きはがした。
「お、お戯れはお止めください!」
「ははっ!ごめんごめん」
殿下は笑いながら謝ってくれたけど、わたしの心臓はまだドキドキしていた。
(うぅ……びっくりした……)
わたしは深呼吸をして心を落ち着かせようとしたけれど、なかなかうまくいかなかった。
そんなわたしをニヤニヤしながら見ていた殿下だったが、やがて真面目な顔に戻って言った。
「冗談じゃなくて本気だよ。君と婚約すれば、僕の目的に一歩近づくことができるんだ」
「え……目的……?」
「まあ、それは今は言えないけれどね」
殿下は意味深に微笑むと、わたしの手を再び握ってきた。
そして、じっとわたしの目を見つめながら言った。
「お願いだよ。僕のパートナーになってほしい」
「でも……わたしなんかでよろしいのでしょうか……」
アルフォード殿下にはもっとふさわしい人がいるはずだ。
例えば、公爵家の令嬢であるクレア様とか。
わたしはしがない男爵家の令嬢にすぎないのだから。
それなのに、なぜわたしなのだろう?不思議に思っていると、殿下は優しく微笑んだ。
「君だからいいんだよ」
「え……」
(それって……クレア様と婚約破棄です。大変ですわ)
殿下はわたしの胸の中なんかお前なしに、唇を近づけてわたしの唇を奪った。
わたしは驚いて、両手をばたばたと動かした。
「んん……」
(だめっ!キスはいや……)
それからほどなくして、談話室で親友のマリエッタとおしゃべりをしていると、アルフォード殿下が顔を出した。
「ちょっと、話せるかな?」
「は、はい!」
殿下は私を中庭まで連れて行った。
「再来週に、王宮で盛大な夜会を開くことになっているんだが。ぜひ、君にも来てほしいんだ」
「え……?わたしが……ですか?」
アルフォード殿下は、力強くうなずくと、わたしの手を取った。
「君には婚約者もいないし、僕の正式な婚約者として社交界デビューして貰いたいと思っているんだ。お願いできるかな?」
「そ、そんな……クレア様がいらっしゃるのに困ります!」
わたしは思わず後ずさりしてしまったが、殿下は逃すまいとわたしに抱きついてきた。
(うわぁっ!?)
わたしは慌てて周囲を見回したが、幸いにも人影はなかった。
でも、誰かに見られたら大変だと思い、わたしは殿下を引きはがした。
「お、お戯れはお止めください!」
「ははっ!ごめんごめん」
殿下は笑いながら謝ってくれたけど、わたしの心臓はまだドキドキしていた。
(うぅ……びっくりした……)
わたしは深呼吸をして心を落ち着かせようとしたけれど、なかなかうまくいかなかった。
そんなわたしをニヤニヤしながら見ていた殿下だったが、やがて真面目な顔に戻って言った。
「冗談じゃなくて本気だよ。君と婚約すれば、僕の目的に一歩近づくことができるんだ」
「え……目的……?」
「まあ、それは今は言えないけれどね」
殿下は意味深に微笑むと、わたしの手を再び握ってきた。
そして、じっとわたしの目を見つめながら言った。
「お願いだよ。僕のパートナーになってほしい」
「でも……わたしなんかでよろしいのでしょうか……」
アルフォード殿下にはもっとふさわしい人がいるはずだ。
例えば、公爵家の令嬢であるクレア様とか。
わたしはしがない男爵家の令嬢にすぎないのだから。
それなのに、なぜわたしなのだろう?不思議に思っていると、殿下は優しく微笑んだ。
「君だからいいんだよ」
「え……」
(それって……クレア様と婚約破棄です。大変ですわ)
殿下はわたしの胸の中なんかお前なしに、唇を近づけてわたしの唇を奪った。
わたしは驚いて、両手をばたばたと動かした。
「んん……」
(だめっ!キスはいや……)
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