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クレア様はわたしたちに挨拶をすると微笑んだ。

その表情からは自信に満ち溢れているように見える。

(……やっぱり美人よね)

わたしは彼女を見てそう思った。

まるで作り物のような美しさだ。

絹糸のような薄茶色の髪に、透き通るような白い肌、長い睫毛に縁取られた宝石のように輝く碧い瞳、そして薔薇色の頬と唇……彼女を見ていると自分がいかに凡庸な人間かを思い知らされるようだった。

「おはようございます、クレア様」

わたしが挨拶をすると彼女はわたしをじっと見つめてから、小さく微笑んだ。

だがその笑顔からは敵意のようなものを感じる。

(やっぱり彼女もわたしのことが気に入らないんだわ)

わたしはそう思った。

「では、クラリス。また昼休みにね」

殿下はそう言うと、私に軽く手を振ると歩き始める。

わたしも慌ててお辞儀をした。

「あなた、殿下とどのような関係? ずいぶんと親し気だけど?まさか恋人同士ではないでしょうね?」

クレア様が鋭い視線で睨みつけてくるので、わたしはびくっとしてしまった。

「いえ、そのような関係ではありません」

わたしが否定すると、彼女はわたしの顔をじっと見つめてから言った。

「まぁいいわ。どちらにせよあなたはただの男爵令嬢。多少、頭は良いみたいだけど、魔力は私の方が数倍上だと思うわよ」

それだけ言うと踵を返して、自分の机に戻っていく。

取り巻きの少女たちもクスクス笑いながらその後を追った。

(ひどい言われようだわ)

わたしはため息をつくと、机に座った。

するとマリエッタが近づいて来た。

「気にすることないわよ。あんな傲慢な女の言うことなんて」

「ありがとう。でも大丈夫よ」

わたしがそう言って微笑むと、彼女はほっとしたような表情を見せた。

だがそのすぐ後に予鈴が鳴り、先生が入ってくると生徒たちは慌てて席に着くのだった。


◇◇◇


昼休みになると、私とアルフォード殿下は二人でランチを食べ始めた。

今日のメニューは鶏肉のソテーである。

殿下はナイフとフォークを使って上品に食べているが、私は慣れないせいかあまりうまく食べられなかった。

「何か悩みでもあるのかい?さっきから浮かない顔をしているよ」

殿下の言葉に、わたしはどきっとした。

彼は洞察力にも優れているようだ。

「……実はクレア様に嫌われているみたいで」

私が答えると、殿下は少し考えてから言った。

「わたしも同じだよ」

「え?」

意外な言葉に驚いてしまう。

てっきり仲良しかと思っていたのだが。
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