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「君が入学試験の日に初めて会ったときからね。それから入学式の堂々とした挨拶を聞いて確信したんだ。君こそが僕の理想の女性だって」

「そんな……」

わたしが戸惑っていると、アルフォード殿下はわたしの手を引っ張って抱き寄せた。

そしてわたしの顔に顔を近づけてくる。

わたしはびっくりして思わず目をつぶってしまう。

しかし、何も起こらない。

目を開けるとアルフォード殿下はにやにや笑っていた。

「……殿下?」

「ははは! ごめんごめん」

彼は笑いながらわたしを放してくれた。

からかわれていたらしいことに気づいて、顔が赤くなる。

悔しいので少し反撃することにした。

「殿下、あなたは誰にでもこうなさるのですか?」

わたしが言うとアルフォード殿下は真面目な顔になって首を横に振った。

「いや、そんなことはないよ。特に気位の高いクレアにはそんな冗談なんて通じないからね」

それを聞いてわたしはほっと胸を撫で下ろす。

さすがに王太子殿下に迫られてはかなわないからだ。

アルフォード殿下はわたしの頬を撫でながら言う。

「もしも君が僕の妃になってくれるなら、僕は全力で君を幸せにするよ」

「え?」

突然のプロポーズに頭が真っ白になった。

しかしアルフォード殿下はすぐに笑うと言った。

「はははっ、冗談だよ」

冗談の割には目が笑っていなかったような気がするけど……気のせいだろうか? 

そんなことを考えていると、馬車が停まった。

どうやら劇場の近くに停まったらしい。

「殿下、わたし……?」

混乱していると、馬車の扉が外から開かれ、従者が顔を出した。

「アルフォード殿下! そろそろバレイが始まりますが」

アルフォード殿下はわたしの手を取った。

「君は観劇は好きかい?」

「え、ええ」

わたしは戸惑いながら答えた。

劇場に連れて行かれるということは、そういうことだろうか? 

だとしたらまずい。

わたしにはそんな趣味はないのだ。

「あの、殿下?」

「そんなに不安そうな声を出さなくても大丈夫だよ」

そう言ってアルフォード殿下はわたしの手をぎゅっと握った。

馬車を降りて、そのまま王立劇場の中に入る。

この劇場で行われる演目は一流のものばかりでチケットもなかなか取れないし、値段も高い。

でも殿下は王族だし、別格だろう。

やがて、わたしたちは一等席に案内された。

そこは一番見晴らしのいい席だった。

わたしが驚いていると、アルフォード殿下が耳元で囁いた。

「どう? 気に入った?」
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