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「私に何かご用でしょうか?」

わたしが尋ねると、マリエッタは手を合わせて微笑んだ。

「クレア様はあなたが面白くないと思いますよ。彼女は王太子妃になる人ですから主席で入学したかったはず。それに、第二王子の婚約者であることもお忘れなく」

「ええ、もちろんです」

わたしがそう答えるとマリエッタは満足そうな顔をして談話室を出て行った。

どうやら忠告してくれたようだ。

わたしは少しだけ気持ちが楽になった気がした。

「まったく、人の妹に何を吹き込もうとしているんだ?」

いつの間にかルドルフがわたしの後ろに立っていた。

そしてわたしと目線を合わせるように床に膝をついた。

わたしは驚いて目を丸くする。

すると彼は苦笑した。

「好き嫌いにいいかだめかなんか、あるかな? もちろん、ぼくは妹を応援するよ」

ルドルフはわたしの頭をぽんぽんと撫でた。

そして、立ち上がると談話室を出て行った。

「びっくりした。まったくお兄様ったら……」

わたしは小さくため息をつくと、ソファに深く腰掛けたのだった。


それから数日後のことだった。食堂で昼食をとっていると、アルフォード殿下がわたしに話しかけてきたのだ。

「クラリス様、挨拶が遅れたね。君が学術も実技も主席で、あんなすごい魔法を持っているなんて、驚いたよ」

アルフォード殿下はそう言って微笑む。

わたしは恐縮して首を横に振った。

「いえ、わたしなんてたいしたことありませんわ」

「そう謙遜しなくてもいいのに」

とアルフォード殿下は笑う。

その笑顔はまるで天使のようだったが、周囲の女性陣からの視線が痛かったので、早々に退散することにした。

それにしても彼は誰にでもあんな感じで優しいのだろうか? 

それともわたしにだけなのだろうか?

 そんな考えが頭をよぎったが、答えはわからなかった。


放課後になり、帰ろうと思って校舎を出ると王家の紋章が入った馬車が停まっていた。

不審に思っていると、中からアルフォード殿下が出てきた。

彼はわたしに向かって手を振ってくる。

「やあ、クラリス」

「……アルフォード殿下? どうしてここに?」

わたしは驚いて尋ねる。

すると、彼は頬をかきながら答えた。

「実は君に話があって待っていたんだ」

「わたしに……ですか?」

いったい何の用だろう? 

心当たりはなかったが、とりあえず話を聞くために馬車に乗り込んだ。

すると、アルフォード殿下がわたしの手を握ってきた。

「君のことがずっと、気になっていてね」

わたしは驚いて固まってしまう。
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