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エミリーが14歳になった頃、隣国のアズガルド王国との戦争がはじまりました。
国境線の越境をめぐる些細な争いが引き金でした。
エミリーはアルベールの屋敷を訪ねました。
彼に大切なことを伝えたかったのです。
アルベールの部屋に入ると、彼は鎧や剣や盾などの武器を身につけていました。
明日、戦場に向かうと言います。
泣き出しそうなエミリーに、笑顔で挨拶しました。
「エミリー、こんにちは。会えて嬉しいよ」
エミリーは泣きながら抱きつきました。
「アルベール、お願いだから出征しないで。戦争なんて馬鹿げてるよ。怪我したり、死んだりしたらどうするのよ?」
アルベールは彼女を優しく抱き返しました。
「エミリー、ぼくだって君に会えなくなるのは寂しいよ。でも、公爵家の息子だから、第一線で国や人々を守る義務があるんだ。戦争が終われば、すぐに帰ってくるよ」
エミリーは首を振りました。
「戦争が終わるなんて保証なんてないよ。隣国の人々も同じように苦しむの。戦争は絶対にやってはダメなの」
「それは分かってる。でもね、何もしないと敵は攻めてくるし、この国はめちゃくちゃになる。この争いは終わらない。誰だって人を殺したいわけじゃない。でも誰かが自分の力で国や人々を守らないと。君を守って、幸せにしたいと思ってるんだよ」
エミリーは目を伏せました。
「わかってるよ。アルベールはすごく優しくて強いしね。でも、だからこそ、出征しちゃだめなの。戦争に行ったら、君のことをずっと気になって、わたし、おかしくなってしまうと思うから。だって……好きすぎて……愛してる! ずっとそうだったし。今だって、これからもよ」
エミールの瞳から、涙が一滴こぼれて落ちました。アルベールは口元に、強がりの笑みを浮かべていました。
「エミリー、ありがとう。君は本当に優しくて可愛い。でも、だからこそ出征しなくてはいけない。君が戦争に巻き込まれないようにするためにも、戦わなくてはならないんだ。戦争が終わるまで、必ず生きて帰ってくるよ。君のことを忘れない。……愛してる」
彼はそう言って、彼女にキスしました。
国境線の越境をめぐる些細な争いが引き金でした。
エミリーはアルベールの屋敷を訪ねました。
彼に大切なことを伝えたかったのです。
アルベールの部屋に入ると、彼は鎧や剣や盾などの武器を身につけていました。
明日、戦場に向かうと言います。
泣き出しそうなエミリーに、笑顔で挨拶しました。
「エミリー、こんにちは。会えて嬉しいよ」
エミリーは泣きながら抱きつきました。
「アルベール、お願いだから出征しないで。戦争なんて馬鹿げてるよ。怪我したり、死んだりしたらどうするのよ?」
アルベールは彼女を優しく抱き返しました。
「エミリー、ぼくだって君に会えなくなるのは寂しいよ。でも、公爵家の息子だから、第一線で国や人々を守る義務があるんだ。戦争が終われば、すぐに帰ってくるよ」
エミリーは首を振りました。
「戦争が終わるなんて保証なんてないよ。隣国の人々も同じように苦しむの。戦争は絶対にやってはダメなの」
「それは分かってる。でもね、何もしないと敵は攻めてくるし、この国はめちゃくちゃになる。この争いは終わらない。誰だって人を殺したいわけじゃない。でも誰かが自分の力で国や人々を守らないと。君を守って、幸せにしたいと思ってるんだよ」
エミリーは目を伏せました。
「わかってるよ。アルベールはすごく優しくて強いしね。でも、だからこそ、出征しちゃだめなの。戦争に行ったら、君のことをずっと気になって、わたし、おかしくなってしまうと思うから。だって……好きすぎて……愛してる! ずっとそうだったし。今だって、これからもよ」
エミールの瞳から、涙が一滴こぼれて落ちました。アルベールは口元に、強がりの笑みを浮かべていました。
「エミリー、ありがとう。君は本当に優しくて可愛い。でも、だからこそ出征しなくてはいけない。君が戦争に巻き込まれないようにするためにも、戦わなくてはならないんだ。戦争が終わるまで、必ず生きて帰ってくるよ。君のことを忘れない。……愛してる」
彼はそう言って、彼女にキスしました。
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