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第8話
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それから、次の日。みっちゃんの顔は真っ青だった。ゲンじいさんは、飛び上がった。
「何されたんだ!」
みっちゃんはさびしそうに、ランドセルのカバーを外した。真新しいランドセルの後ろに、釘で引っ掻いた跡がある。
「ひどいじゃないか。先生に、見せたんだろう?」
みっちゃんは、首を横に振った。
「ムリだよ。もっと、やられるだけ」
「周りの子たちは?」
「なにもしないよ。みてるだけだよ」
「ああ、何でことだ」
ゲンじいさんは、頭を抱え込んだ。みっちゃんは、ゲンじいさんの髪をなでた。
「かなしまないで。おじちゃん、ねえ。ダメよ、ダメ」
こんなに、こんなにつらい思いをしている。それなのに、この子はまだ他人のことを気づかっている。そのいじらしさに、ゲンじいさんの胸は痛んだ。
その晩は大雨だった。屋根を、こつこつ叩く音がする。ゲンじいさんは、みっちゃんのことを想って寝付けなかった。
親でもないわしは、みっちゃんに何をしてあげられる?
「何されたんだ!」
みっちゃんはさびしそうに、ランドセルのカバーを外した。真新しいランドセルの後ろに、釘で引っ掻いた跡がある。
「ひどいじゃないか。先生に、見せたんだろう?」
みっちゃんは、首を横に振った。
「ムリだよ。もっと、やられるだけ」
「周りの子たちは?」
「なにもしないよ。みてるだけだよ」
「ああ、何でことだ」
ゲンじいさんは、頭を抱え込んだ。みっちゃんは、ゲンじいさんの髪をなでた。
「かなしまないで。おじちゃん、ねえ。ダメよ、ダメ」
こんなに、こんなにつらい思いをしている。それなのに、この子はまだ他人のことを気づかっている。そのいじらしさに、ゲンじいさんの胸は痛んだ。
その晩は大雨だった。屋根を、こつこつ叩く音がする。ゲンじいさんは、みっちゃんのことを想って寝付けなかった。
親でもないわしは、みっちゃんに何をしてあげられる?
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